オープンキャンパスでまず伝えるべき事とは

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

この時期、多くの高校では入試説明会に先立ち、オープンキャンパスやオープンスクールが開催されています。

お付き合い先の学校を始めいくつかに訪問させて頂きますと、授業の一部を体験させるもの、早い段階で入試対策について触れる学校、外部の特別講師を招聘する学校、複数回実施し回を重ねるごとに異なった内容を用意する学校など、実に様々です。

ここで少し立ち止まって考えてみたいのですが、そもそもオープンキャンパスで伝えるべき事とは何でしょうか。

自校の魅力、各学科・コースの特色、サポート体制、教職員の方々の人となり、授業の様子、進学実績、部活動・・・などなど。

どれも間違っていないと思います。

参加者の自校に対する関心を高めることで、次回のイベントや入試説明会に誘導し実際に受験させるという目的が、生徒募集を考える上での一つの正解になるのでしょう。

しかし、「まず伝えるべき事は何か」と考えた場合、個人的には

●高校生になるとは一体どういうことか。

を伝えるのが最も大切なように感じます。

多くの生徒さんは高校進学を当たり前のことと考えているかも知れませんが、高校進学という事自体は本来主体的な一つの決断であるはずです。

私が実際に見学に伺った高校では、体験授業や学校説明の場で、中学校や高校・大学での学習との違いや、今が人生の中でどういう位置づけの時期なのか、そもそも学ぶとはどういう事かを先生方の言葉で伝える時間を持たれていました。

つまり、

①「先生達は、学ぶという事や高校での学習とはこういう事だと思っている。」⇒②「ウチの学校では、こんな取り組みをしている。」⇒③「君達自身は、何の為に勉強しようと思っているの?」

というように生徒に問いかける流れを持っているのです。

多くの学校では、ひたすら②を伝える事に終始しているのでは無いでしょうか。

これは、極端な言い方をすればただの押し売りになりかねません。

勿論、学校のカラーやブランド、歴史やカルチャーによって追求すべきオープンキャンパスの形は異なります。

あくまで個人的な意見ですが、きちんとした情報と先生方の姿勢を伝えた上で、生徒自身に考えさせる機会を提供する形が私は理想だと思っています。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

砂に水を注ぐ十年

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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先日、東海地方の或る私立高等学校さまの学校説明会にお邪魔させて頂く機会がありました。

3日間で3,000名を超える中学生・保護者らが集まるこの説明会の核は、先生方が腕によりをかけた80講座以上の体験授業。

現在では県下の進学校として知られる同校ですが、その評価は一朝一夕で築かれたものではありません。

事実、多くの私学が経験してきたように、過去には苦難の時代が存在します。

その中で、学校を変える為に先生方が暗中模索で始めたのが、前述した授業力の向上を目的とした体験授業の発信でした。

授業改革の過程を、ある先生は次のように喩えています。

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手で水を抄くって砂に注ぐと、音も無く吸い込まれます。

繰り返し、繰り返し注いでもやはり吸い込まれて行く。

それを十年繰り返していたら、ある時点でふっと砂の表面から水が湧き上がってきた。

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同校の説明会を体験すると、運営する先生方も、それを手伝う生徒さんも、本当にイキイキした表情をされています。

説明会で出会った先生の人柄や、在校生の振る舞いを目にして受験を決める中学生が多いということも頷けます。

この学校が行ったのは、小手先の生徒募集施策やマーケティングといった事ではありません。

現場の先生方一人ひとりが、「この学校は何故存在するのか」「自分達は何をすべきか」という原点に立ち返り、教務という教育の根幹から学校を変えて来たのです。

ただ、それだけです。

こうありたい、と思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

看護という仕事に求められるもの

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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仕事柄、看護系の学校の先生にお目にかかる事があります。

優れた観察眼と、優しさが同居した視線とでも言うのでしょうか。看護師、元看護師という方の眼差しには、一種独特のものを感じます。

看護の基本原理を築き、信念の実践者でもあったフローレンス・ナイチンゲールは、『看護覚え書』の中でその職業を次のように表現しています。

●自分自身はけっして感じたことのない他人の感情のただなかへ自己を投入する能力を、これほど必要とする仕事は他に存在しない。

こうも言っています。

●もしあなたがこの能力を全然もっていないのであれば、あなたは看護から身を退いたほうがよいであろう。

これから進路を考える10代の気持ちで読むと、非常に厳しい言葉ですね。

勿論、「全然もっていない」というのは稀だと思います。

また、人間は発達する存在ですし、多少の苦手はあっても、努力やその他の力でカバー出来る余地もあると信じたいです。

ただこの問題は、よりよいキャリア形成や中途退学の抑制という意味でも、生徒・教育者共に正面から向き合う必要のある大事なテーマだと思います。

やはり、一生にかかわる事ですから。

学校広報の立場から言えば、生徒募集の為の情報発信だけでなく、その厳しさや困難さも積極的に伝えていく姿勢と、事前相談会による意思のすり合わせの機会の充実が不可欠と言えるでしょう。

~追記~

どの職業にも、いつでも立ち返ることの出来る原点と言える書物があると思います。

そういう本があるのは幸せな事ですね。

私はたまたま浪人中に薦められてこの本を読んだのですが、今開いても、やはり震えるような思いがします。

これから進路を考える方は、良く分からなくとも良いので、そういった書物を教えて貰ってページをめくってみることをおススメします。

NOTES ON NURSING

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

学校案内の到着確認

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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5月のこの時期、全国の高校・専門学校・大学で、平成26年度入試の為の学校案内と受験要項の配布が始まります。

学校案内は、自校の魅力が凝縮されたものであり、未来の生徒が直接手にとって触れる、生徒募集の要とも言えるものです。

また、塾・予備校・学校に設置される自校の案内は、進路指導を介して、入学へと導く窓としての役割を果たします。

私が新卒として船井総研に入社し、チームリーダーの松下から教わった事の一つに、

●発送先の学校や塾・予備校に対しては、電話で資料の到着確認をすることが大切。

という教えがあります。

「学校案内を送ること」は目的ではありません。

正しい目的は、

●請求主・発送先担当者が封を開け、進学希望者の目に触れる場所に設置してくれること。

もっと言えば、

●進学希望者が手に取り認知して貰うこと。

●より自校を知る為に、ひいては出願に向けて行動して貰うこと。

にあります。

生徒募集上の重要な経路となる塾や予備校に対し、資料の到着確認電話する。

決して難しい事ではありませんが、たったこれだけの事で、情報の伝達率は確実に向上します。

一本の電話が、発送先との関係構築という意味でも効果を発揮します。

是非、自校の魅力を多くの方に伝える為に、取り組んで頂ければと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

保護者は「お客様」では無い

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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過去の記事(学校説明会における座談会コンテンツ)でご紹介した私立高等学校さまの夏季学校見学会は、3日間で3,000名以上もの来場者が訪れる事で知られています。

見学会の会期中は、教職員だけでは無く、在校生の保護者も来場者を迎えるのに一役買っています。

半日以上あるイベントの中、来場者が休憩する為の無料喫茶室の運営を、保護者の会が担っているのです。

一見些細な事に見えるかもしれませんが、この背景には、次のような哲学が横たわっています。

すなわち、

●保護者は、学校が提供するサービスを消費するだけのお客様では無い。

●教員と一緒に、子どもにとってより良い学校作りを行っていく主体である。

という共通認識が、学校見学会における保護者の役割といった形で顕れているのだと思います。

教職員と在校生、保護者が一体となって学校本来の魅力を伝え、未来の生徒を迎える訳です。

保護者をお客様扱いし、目に見えるサービスレベルの向上のみに重きを置いている学校とは異なる点です。

校内を歩くと、先生方と保護者の間に交わされるふとしたやりとりからも、教職員が生徒と保護者に対し本当に良い関係作りをしてる事が伺えます。

勿論、学校も広い意味ではサービス業である以上、他業界に倣って「集客」「接客」の視点を取り入れる事は重要です。

ただ、それだけではどこにも辿り着けません。

本質を突き詰めると、上記の学校のように、「共によりよい教育環境を作る関係」を生み出す事が重要になってくるのではないでしょうか。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)