秘めた能力の束と決断

教員として生徒と関わっていると、私などでは到底及びもしないような才能にしばしば出会います。

知的能力のこともあれば、身体能力、対人能力、ある分野への情熱など、状況は様々です。

何かしら優れた資質を持っていることは素直に誇って良いことだと思いますし、そのままどんどん進んでいって欲しい。

しかし、際立った能力の芽を持ちながらも、体調やメンタル面の要因から力を上手く発揮出来ず、高校生活での夢・目標との間で悶え苦しむ場面を目にすることが有ります。

15年前後の限られた人生の中で、それ程までに真剣に悩み抜く生徒に掛けられる言葉は僅かです。

勿論、一支援者としては、必要以上の失敗体験をさせたくないという思いは持っています。

それでも、例えば二者択一の中から両方を選び取る生徒が居たら、自分は止めることは出来ません。

先日した面談をしたある生徒は、元々持っていた入学時の希望には区切りをつけ、一つの選択をすることになりました。

どうやら、表現の世界では無く、教育やメンタルヘルスの分野を目指すようです。

今はまだ、劣等感のようなものに苛まれているかも知れません。

しかし、自分にとってより大切なテーマに気づいたり、自分の状況を理解しながら取捨選択をしていくことは、何ら恥じることでは無いと思います。

教員が出来る唯一のことは、生徒自身が悩み抜いて出した決断を尊重し、受け止めることです。

勇気を持ってした決断を、心から讃えたいと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

誰かの為に働く

先日、2年生の生徒と兵庫県内の特別養護老人ホームさんを訪問させて頂きました。

これまで就職か進学かで悩み続けて来ましたが、面談の中で介護というキーワードが挙がり、「まずは一緒に見に行ってみよう!」と今回の見学に至りました。

職場見学は、私自身とても興奮します。

職業人としての先輩から伺う現場の話は、いつも発見に満ちているからです。

主婦をされていたという職員さんの言葉からは、業種は違えど、利用者さんと真剣に向き合う姿勢や、若手の介護者をきちんと育てようと言う思いが伝わって来ます。

ご多忙にも関わらず、2時間近くに亘って介護の世界のやりがいや現実、辛い部分についても丁寧に教えて下さいました。

生徒の横顔は、そうした経験から紡がれた言葉を素直に吸収しているようでした。

余談ですが、見学の中で介護の仕事に興味を持った理由を問われる場面も。

生徒が自分の言葉でしっかりと答える姿にも感動しましたが、「そんな動機があったんだ!」と、正直驚きました。

これまで、細々とは言え2年近く関わってきたのである程度のことは知っているつもりでしたが、校舎の中の、生徒-教員間で見られる姿なんて本当にごく一部に過ぎないんだなぁと痛感。

何やら、生徒の中でこれからの生き方についての思考が動き出す場面に立ち会えたような気持ちです。

学校で学ぶ主体から、職業人として働くまでにはまだ少し隔たりがあるかも知れませんが、自身の資質を大切にしながら、良い形で将来の仕事に繋がってくれると思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

教員としての5年目を迎えるにあたって

先週、入学時に1年間だけ担任をさせて貰った生徒達の卒業式が有りました。

過去の記録を繰ってみると、2016年の4月にこんなことを書いていました。

この春から、1年生の担任をさせて頂くことになりました。
明日は始業式。
いよいよ、正式に新入生達が登校してきます。
何やら、宝物を預かるような気持ち。
現実には、教員をやっていると大変な事も有りますし、帰り道で自分の授業を思い返しながら「くそっ!」と呟いている日が大半です。
それでも楽しみなのは、やはりこの仕事が好きだからなのだと思います。
今の気持ちを忘れずに居たいです。

明日

教員として生まれて初めて受け持った1年生に対し、新鮮な気持ちで向き合っていたことを思い出します。

直接関わった時間は僅かでしたが、晴れやかな表情の卒業生達を送り出すことが出来て、本当に良かったです。

一息ついて、直ぐに新年度です。

新しい組織や役割について分からないことも多いですが、この数日間、どんな姿勢で5年目を過ごすかを考えていました。

頭に浮かんだ柱は3つ有ります。

1つ目は、生徒の成長や日々の悩みに、自分が一番泥臭く関わること。

高校生の倍ほどの年齢になり、職場にも慣れてきた今、20代の先生と比べると生徒と少し距離が出来てきました。

勿論、持ち味や距離感は人それぞれ違いますし、関わり方の質が変化するのは当然だと思います。

それでも、生徒のことを一番良く見ていて、小さなことにも率先して動ける教員で有りたい。

学級運営や授業、生徒対応でも、もっともっと色んなことを試していきたいです。

2つ目は、各クラスの課題を、組織で支える風土を作ること。

比較的若い組織である自キャンパスでは、若手の先生も全員が担任を持っています。

その熱心さ、技量の高さには驚くばかりですが、生徒の課題をチームで支えるという動きは、まだまだ不足しているように感じます。

クラスや学年、コースを越えて、少しでもキャンパス全体で個々の生徒と関わっていく空気を作っていきたいです。

3つ目は、生活指導・生徒指導課の一員として、生徒に力をつけさせる為のアプローチを年単位で行うこと。

この1年間、生徒指導上で苦しい思いをした出来事が複数有りました。

個々のことは語れませんが、少しでも問題行動を未然に防げるよう、日々社会のルールをきちんと教えなければならないと思います。

当然、それだけでは足りません。

何故そのようなルールがあるかを考える時間や、社会性と情動の学習の機会をしっかり保障していきたい。

学校だけではコントロールし切れないことは多いですが、生徒が誰かを傷つけてしまったり、傷つけられずに済むよう、後悔の無い指導を行いたいと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

小学生と向き合う仕事

今月に入って、小学校の教師を目指している二人の生徒から話を聞く機会が有りました。

それぞれが、自分の心やこれまでの体験に根ざした動機を持っていて、真剣に悩み、考えているようです。

僕自身は、高校生の頃は教師になりたいという真っ直ぐで強い気持ちは持っていなかったので、少し眩しい思いがします。

そして、生徒が語る言葉に惹き付けられている自分に気がつきます。

頭に浮かんでくるのは、

「僕もいつか、小学生に教える仕事をしてみたいな」

という思いです。

最近そう感じるようになったきっかけの一つは、いじめ被害児童の保護者が書いた生々しい記録を綴った書籍を手に取ったことに有ります。

もしかしたら、不登校経験を持つ生徒と日々面談をする中で、彼・彼女らの小学校時代の経験が、今なお大きな影を落としていることも影響しているかも知れません。

生々しい体験が記された本を読んだり、生徒の声に耳を傾けていると、自分も小学校高学年という時間の中で苦しい思いをしたことが思い出されます。

幸いにも、そのせいで自分の足元が揺らぐようなことは有りません。

しかし、そこには特別な「何か」が有ります。全く忘れてしまうことは出来ません。

高校生や10代後半の生徒と向き合うことは自分にとって大事なテーマですし、ずっと続けたい。

しかし、いつかはもっともっと下の年代の所まで遡って関わってみたい。

そんな願望を感じています。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

性教育についての覚え書

2月の始め頃に、リヒテルズ直子さんによる「オランダに学ぶこれからの日本の性教育」という講演を聴講して来ました。

性教育と言うテーマに関心を持った私自身の動機としては、

  • 小中学校段階で誤学習を積み重ねてきた生徒や、他者の感情理解に課題を持っている生徒の恋愛や性の悩みに上手く関われていないこと。
  • 自校の性教育が「寝た子を起こすな」式の消極的な取り組みに止まっていること。
  • 様々なトラブルが起こる中、事後的な対応では無く、日常的にもっとすべきことがあるのでは無いかと感じていること。

が挙げられます。

講演の要約とは異なるかも知れませんが、自分なりに受け止めたポイントを書いておきます。

  1. オランダにおける充実した性教育の根本には、「人権意識」や「自立した市民の育成」という理念がある。
  2. 移民・難民の流入によって様々な宗教的背景を持つ人々が増加する中、性意識についても多様性を尊重する姿勢がより一層求められている。性意識が一人ひとり異なることを認め、性的マイノリティの人権を尊重することも指針として定められている。
  3. 社会における性的なタブーの存在は、封建社会の支配体制と密接な繋がりを持っている。性の問題は、民主化や個人としての独立にも通じるテーマである。
  4. 人を好きになり性的な関係を築くことも、本来は人として「祝福すべきこと」である。そういった、性・生に対する肯定的な面をきちんと教えている。単に「してはいけないこと」「タブー」としては、性や人を好きになることが忌むべきことになってしまう。
  5. 幼い時期から、「自分が望まないことにノーと言うこと」を教えている。性被害から身を守る意味も有るが、自他の尊重や、自立して行動出来ることに重きを置いている。
  6. 思春期以前や小学生段階から具体的な避妊方法について教えることに目が行きがちだが、他国と比べて子どもたちが性交渉に至る年齢は早くは無い。
  7. 性教育をすすめる中では、ピアグループや、電話・チャットによる相談室、動画や絵本・ゲームを活用したゲーム教材を活用している。
  8. LGBTの子どもの約5分の1が自分の性的傾向を受け入れられない。自殺企図や自殺未遂も高い現実がある。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)