凄い生徒—「自分で学ぶ」を支援する

試験1週間前の放課後。

教室でテスト勉強をしている生徒の手元に目をやると、現代社会の用語の復習をしている。

文言自体は、私が配布したテスト対策用のプリントと同じなので見覚えがある。

驚いたのは、それを単語カードアプリのQuizletに打ち込んで、iPadで反復練習が出来るよう工夫がされていたからだ。

話を聞いてみると、私のクラスの生徒がその準備をして、他クラスの生徒も活用できるようにしたらしい。

生徒のiPadの画面。定着が不十分な語句をピックアップして効率的に学ぶことが出来る。

凄い生徒がいたものだ。

自分が感動した理由は2つある。

1つ目は、教員に言われるでもなく、自分で進んで取り組んでいること。

作った生徒は勿論だが、そのツールを使っている生徒も、「自分にはこの方法が良い」という選択・判断をして学んでいる。

ただ言われたことをやるのとは雲泥の差が有る。

2つ目は、「教える人→学ぶ人」という関係では無くて、生徒が自分で学べる仕組みを作っていること。

勉強が得意な生徒が苦手な生徒に教えることも素晴らしいが、そういったマンツーマンの枠を超えて、多くの人の学びをサポートするという価値を生み出している。

教員である自分以上に、生徒の中では新しい教育がどんどん進んでいるように感じます。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

App Store Quizlet クイズレット: 英語を習うそして勉強

Google Play Quizlet クイズレット:語学と語彙を単語カードで学ぶ

役割の再確認

先日、職場のICT教育研修のプログラムで、東京学芸大学の森本康彦教授のお話を伺う機会が有りました。

高校の教員として果たしていくべき役割を、社会の変化や大学入試改革、これから生徒が身につけていくべき力と言った視点から語られ、強力な指針を示して頂いたように思います。

自分の問題意識や今まで見聞きしたこと、これからやりたいことのキーワードが何やら頭の中で繋がりつつあるように感じます。

一日たった今も、心がざわざわしています。

研修の趣旨とは脱線するかも知れませんが、詰まるところ自分は、先生が語る「教育」の仕事に感動したのだと思います。

ただ物事を教えるのでは無く、生徒が知識を得たり、自分で考え成長していく為のコーディネーターになること。

そのような授業を実践していく為には、教員自身の確かな技量とコミュニケーション力がますます求められます。

そんな理想を、物凄い温度の熱を持って実践されている姿に、強く惹きつけられました。

これは、一生を賭ける値打ちの有る仕事のようです。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

自分の席からは見えないもの

9月に入ってから、先輩教員に声を掛けて頂いて、キャリア教育やICTに関するプロジェクト会議に出席させて頂いた。

私の職場は、全国に拠点を持つ広域通信制高校なので、本部職員と各キャンパスの有志の教員が定期的に集まり、こうしたプログラムを作りあげている。

スケールメリットを活かした教育作りに取り組む先生方の様子を目の当たりにすると、自分の出来ていること、出来ていないことが良く分かる。

視点の高さ、と言っても良いかも知れない。

普段、職員室の椅子に座っていると、どうしても目の前の仕事や、自分のクラスの生徒ばかりに目がいってしまう。

勿論、一番は目の前の事だ。

しかし、自キャンパスに対しても、全国のキャンパスに対しても、もっと出来ることは有るんじゃないかという思いが湧いて来る。

この日声をかけて頂いたのは、会議の中で、googleフォームを活用した業務の効率化を提案することが目的。

キャリア授業の中では、単元ごとの理解度を測る為に紙のアンケートを頻繁にしているし、それをキャンパスごとで整理し、全国で共有するのはとても手間がかかる。

それを、WEBアンケートフォームを活用する事で各キャンパスの負担を減らし、情報共有、フィードバックを容易にしようというのが私の提案だ。

予め作って行ったサンプルを見せると、どの先生もすぐに狙いを理解して下さり、是非やろうという結論に。

この仕組みは、生徒の満足度調査にも使えるし、複数キャンパスを持つ学校だからこそよりメリットも際立ってくる。

教育の世界に飛び込んで2年目。

会社勤めをしていた際に教えて貰った考え方やツールが、色んな場面で役に立ってきそうです。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

全日制・定時制の枠組みを超えた高校

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

「定時制」と聞くと、私は山田洋次監督の『学校』(1993)という映画を思い出します。

定時制課程は歴史的に、中学校卒業後に勤務に従事するなど様々な理由で全日制高校に進学出来ない青少年に対し、高等教育の機会を提供する役割を果たして来ました。

近年は、全日制課程からの編・転入学と言った形で多様な入学動機を持った生徒が集まることから、その役割にも変化が見られます。

平成27年度開校を目指して進められている「京都フレックス学園構想」も、その流れを汲んだ計画です。

京都府の計画では、柔軟な単位制システムをベースとし、実習・体験型科目の充実、ソーシャルスキルトレーニング、ICTの導入、外部機関の人的資源・施設を活用した授業の実施などが盛り込まれています。

また、就労や自立支援の為プログラムも用意されており、発達障害のある生徒や不登校経験者へのサポートを行う学校としての役割も期待されています。

個人的に思うのは、後は「誰が」「どういうマインドで向き合うか」というヒトの部分でしょうか。

この先生達とだったら勉強を頑張ってみたいと思える関係性も、教育環境を考える上でとても大きい要素だと思います。

開校までまだ若干の期間があるので今後どうなるのかは未知数ですが、公教育も時代の要請を受け、全日制・定時制の枠組みを越えて確実にその姿を変化させています。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

遠隔授業の発展と通信制高校の存在理由

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

2013年3月27日の日本マイクロソフトの発表で、『大阪府教育委員会、日本マイクロソフトと連携して全府立高校を対象に遠隔授業サポートシステムを提供』する、というニュースがありました。

今回のシステムは、音声と映像をリアルタイムで届けあう通信技術によって、長期入院中・自宅療養中の生徒の授業参加を可能にし、学習上の遅れを防ぐ事が出来る、というものです。

(府教委の発表では、将来は自宅や病院での勉強を単位認定することも視野に入れ、難病の小中学生や不登校の生徒への活用も検討されている事が伺えます。)

クラウドサービスの発展によって、登校が困難だった生徒の教育機会が保障されるのは大変喜ばしい事です。

ただ、全国に約250校あり、19万人近くの生徒が在籍する通信制の高校にとっては、自らの存在理由を再定義しなければならない転換点が訪れたと言えるかと思います。

というのも、通信制高校は

●「全日制・定時制の高校に通学することができない青少年に対して、通信の方法により高校教育を受ける機会を与える」こと

をその定義とし、事実上、不登校状態にある生徒や、中途退学の経験を持つ生徒の進学先としての役割を担ってきた歴史があります。

(念の為補足しますが、全ての学校がそうではありません。また私自身は、そういった学校を運営され、日々生徒と向き合っておられる先生方に個人的な敬意を感じています。)

少し想像の飛躍があるかもしれませんが、今回の大阪府の取り組みは、

●高卒資格を取得する為の、代替的な機会の提供のみに存在理由を見出している通信制高校は、今後縮小せざるを得ない。

という流れを示しているように思われます。

自校の役割の再確認と、積極的に選ばれる為の魅力の創出が必要な時期が来ていると言えるでしょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)