凄い生徒—「自分で学ぶ」を支援する

試験1週間前の放課後。

教室でテスト勉強をしている生徒の手元に目をやると、現代社会の用語の復習をしている。

文言自体は、私が配布したテスト対策用のプリントと同じなので見覚えがある。

驚いたのは、それを単語カードアプリのQuizletに打ち込んで、iPadで反復練習が出来るよう工夫がされていたからだ。

話を聞いてみると、私のクラスの生徒がその準備をして、他クラスの生徒も活用できるようにしたらしい。

生徒のiPadの画面。定着が不十分な語句をピックアップして効率的に学ぶことが出来る。

凄い生徒がいたものだ。

自分が感動した理由は2つある。

1つ目は、教員に言われるでもなく、自分で進んで取り組んでいること。

作った生徒は勿論だが、そのツールを使っている生徒も、「自分にはこの方法が良い」という選択・判断をして学んでいる。

ただ言われたことをやるのとは雲泥の差が有る。

2つ目は、「教える人→学ぶ人」という関係では無くて、生徒が自分で学べる仕組みを作っていること。

勉強が得意な生徒が苦手な生徒に教えることも素晴らしいが、そういったマンツーマンの枠を超えて、多くの人の学びをサポートするという価値を生み出している。

教員である自分以上に、生徒の中では新しい教育がどんどん進んでいるように感じます。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

App Store Quizlet クイズレット: 英語を習うそして勉強

Google Play Quizlet クイズレット:語学と語彙を単語カードで学ぶ

10代の自死の知らせを聞いて不安を感じている生徒へ

8月の自殺者数増加の報道に続いて、大阪市北区の商業施設で起こった痛ましい出来事が耳に入ってきた。

同じ市内で同世代の命が失われたというニュースに、不安を感じる自校の生徒も居ると思う。

死は、身近な人であれば勿論、遠い関係の人でもあっても重いものだ。

人前ではいつもと変わらないように振舞っていたとしても、自分でも気づかないうちに大きな影響を受けていることもある。

仲間内ではセンセーショナルな面が話題に上がるかも知れないが、心の内を話すのは難しいことだ。

私自身、大人になった今であれば、誰かの死を時間を掛けて反芻し、その気持ちの一部を人に話すことも出来る。

しかし、10代の頃に身近な人の死に直面していたら、誰にも話すことは出来ないだろうと思う。そもそも上手く言葉にすることが出来ないし、理解しくれる人を見つけることも容易では無い。

もし、今まさにそうした不安を抱えている生徒がいれば、少しだけ信頼出来る大人に打ち明けてみて欲しい。

親でも、教員でも良い。

場合によっては、スクールカウンセラーや支援者も力になってくれる。

最近は、下記のリンクのように厚生労働省が電話やSNSを介した相談窓口を整備している。

厚生労働省ホームページ 悩みがある方・困っている方へ

苦しさが募り、押しつぶされてしまう前に、安心して相談出来る場へと繋がって欲しいです。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

生徒に対する活動量を視覚化する

夏休みが明けて4日間が経ちました。

ここ数日、生徒に対する「声掛け表」という記録を残しています。

このツールは過去に職場の大先輩から教わったもの。生徒の氏名を一覧にした表を作り、一定期間のうちに教員から声掛けが出来たかを記録し、自身のコミュニケーションの状況を把握する為のものです。

厳密なルールはありませんが、私は

  • 挨拶や注意を除く教員からの声掛けであること。
  • 一対一のコミュニケーションの形を取っているもの。
  • 生徒からの声掛けや質問に対する返答の形を取る会話は除く。

というルールで記録をしてみました。以下の表のようなイメージです。

No.氏名内容
1○○ ○○
2○○ ○○試験教室での雑談
3○○ ○○英検についての話
4○○ ○○
5○○ ○○夏休み明けの髪型について
6○○ ○○電話での連絡・登校時のねぎらい
7○○ ○○
8○○ ○○
9○○ ○○教室移動時の雑談
10○○ ○○
30○○ ○○
声掛け表の例(単に声を掛けたら丸をつけるだけでも良い)

集約すると、次のような結果になりました。

分類人数クラスに占める割合
①教員からの声掛け13人43.3%
②生徒からの声掛けが起点9人30.0%
③不足8人26.7%

あえて意味づけを行うと、

①差し当たって教員からのコミュニケーションが取れている。

②生徒から相談することは出来るが、教員からの働き掛けは不足していると感じてる可能性有り。

③一対一のコミュニケーションの総量自体が不足。困りを感じていても相談出来ないか、関係性が指示・連絡・注意に寄っている可能性有り。

と言ったところでしょうか。

残念ながら、30人の生徒のうち声掛けが出来ているのは半数以下でした。

組織として「生徒へのサポート」を看板に掲げていますが、クラスの全員と関係を築くことの難しさを改めて感じます。

ベテランの教員であれば意識せずとも良好な関係を築いているのかも知れませんが、これが今の私の結果です。

この仕事をしていると、生徒をなかなか登校・学習に導けなかったり、長期欠席や予期せぬトラブルに悩むことが沢山あります。

しかし、その背景には生徒-教員間の関係性と言う要素が一因として存在しますし、それを形作るコミュニケーションの質と量はある程度コントロール可能な筈です。

自分自身で意識して振り返ったり記録しないと分からないことですが、この表であれば、一日の終わりに短時間で出来ます。

1年の終わりに後悔する事が無いよう、定期的にチェックを継続したいと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

夏休み明け登校日前の電話

長期休暇明けの登校を来週に控えた金曜日。

様々な準備の合間に、クラスの生徒に電話を掛けていました。

登校日初日の諸連絡については、生徒所有のiPadやスマホ等で閲覧可能な共有用のアプリで伝えられるので、一件にかける時間はごくごく短いものです。

主なねらいは、生徒の状況確認と、一つでも週明けからの不安解消を行うこと。

実際に昼過ぎに電話を掛けてみると、気だるく眠そうな声に出会うことや、元気な声にこちらが励まされる場面もあります。

中には、気恥ずかしそうに最近の生活リズムや、困っていることについて語ってくれる生徒もいます。

勿論、繋がらないこともあります。

電話をしていて感じるのは、電話越しとは言え、一対一の関係から伝わってくる情報の多さです。

慌しく始まる登校日初日。残念ながら、1人対30人の教室ではキャッチしきれないことも多くあります。

自分自身が、生徒に向けて少しずつチューニングされていくようにも感じます。

政府がまとめた2015年の自殺対策白書によると、過去約40年間にわたって集計した18歳以下の日別の自殺者は9月1日が最多であり、長期休暇明けの児童生徒の心理的負担の大きさが伺えます。

教員の働き方の問題が議論される今日ですが、削減・効率化出来ることはとことんしながら、命に関わるかも知れないこうしたケアには変わらず時間を掛けていきたいです。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

6月からの登校が不安な高校生へ

新型コロナの影響も終息に向かい、多くの学校で登校再開の動きが見られるようになりました。

この2か月間、勤務校でもオンライン授業を主体にしながら、限定的な形での登校機会が設定されて来ました。

しかし、全国にはこうした機会さえ無かったり、登校日に欠席が続いてしまい、これから学校に通えるか不安に苛まれている高校生もいると思います。

実際、過去の長期欠席経験が背景にあり、中々リズムが作れない生徒も見られます。

広義の支援者として10代の高校生と話が出来るとしたら、少なくとも次の3つを伝えたいです。

(ここでは新型コロナウィルスに伴う問題はひとまず脇に置き、一般的な登校不安について書いています。)

①何よりもまず心身の健康が最優先

中学時代に不登校を経験し、今なお登校出来ない生徒の中には、自分の力だけでは解決が困難な病気や障害が生きづらさの一因になっているケースがあります。

適切な医療機関に繋がり、様々な努力を重ねる中で状態が改善し、無事高校を卒業していく生徒に出会って来ました。

その入り口は、身近な内科かも知れませんし、場合によっては思春期外来や睡眠外来、メンタルクリニック等かもしれません。

余りにも登校への負担が大きい場合は、どうにもならない苦しみが大きくなる前に、外部の支援機関に繋がってみることを心に留めておいて下さい。

②環境調整の為に出来ることから取り組む

何らかの「動きづらさ」「学ぶ上での困難」があったとしても、出来ることからストレスを減らしたり、良い習慣作りや環境調整を進めている生徒が居ます。

それは、家庭内で出来る食事や睡眠・運動・余暇に関する工夫や、生徒-保護者間のコミュニケーションの取り方かも知れませんし、学校や教員が出来る些細な声掛け、配慮かもしれません。

少しでも動きやすく(過ごしやすく)なる為に、まずはどんな方策から取り組めそうか生徒に投げ掛けてみたいですし、教員として出来ることがあれば是非教えて欲しいです。

③高校は学びの場の一つに過ぎない

自校の生徒には、日常的に「(学校で)待ってるよ」「また明日」という言葉掛けをしています。

良くも悪くも、教員として“学校はくるべきもの”という前提で関わってしまっている自分が居ます。

ただ、今属している学校や学び方が唯一の方法では無いということは伝えておきたいです。

例えば、自分の将来の生き方や設計図が既に出来上がっていて、その為の力や資源を持っている、若しくは必要な資源にアクセスする術を知っている人は、無理して高校に通う必要は有りません。

苦痛しか無い高校生活や、3年間で何の成長も見出せない場合も止めておいた方が良いかも知れません。

学校以外にも一人前の大人になる道筋は無数に有ります。

とは言え、高校教諭をしている以上、同年代と一緒に先人が築いた知に触れながら成長する場として、学校はそれ程捨てたものでは無いとも思っています。

心の底に少しでも登校してみようかなという思いを持っているのであれば、全国の教員を代表して「待ってるよ」と伝えたいです。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)