苦手だから出来ないこと→苦手だけど出来ること

通信制高校で仕事をしていると、生徒から対人的な悩みを聞くことがしばしば有ります。

一例を挙げると、不登校を経験をして来た生徒にとって、ペアワークやグループワークが有る授業、すなわち複数の生徒とのコミュニケーションが発生し得る場は不安の種のようです。

ここから、具体的な解決策・代替案を提示していくのが教員の役割。

ただ、こういった訴えを聞いた時、まずははごくあっさりと

「そうなんや。」

と返答するようにしています。

最初は、否定も肯定もしません。

勿論、これだけでは折角の成長の機会を逸してしまいます。

相手との関係性やタイミングにもよりますが、少しずつ

「(他の人と接するのが)好きじゃなくても、まあまあ出来るようになるかも知れないで。」

「今は出来なくても、少しずつやればハタチぐらいには出来てるかも知れないよ。」

「一人が好きなのは全然良いけど、大勢とも居られる方が生き易いよ。」

というメッセージを伝えていきます。

損得が響く生徒であれば、

「コミュニケーション力を今のうちにつけておいた方が、大人になてからおトクやで。」

「単に知識が有るだけより、色んな人と関わる力があった方がお金になるよ。」

という話をします。

直ぐには変化に繋がらなくても、そうした積み重ねが半年後・一年後の成長に響いて来るのだと思います。

余談ですが、私自身中高生の頃は人と関ることに苦手意識しか無かったですが、10代の終わりに偶々教育の世界に惹きつけられ、訓練の結果多少変わりました。

得意かと聞かれたら分かりませんが、必要な話は出来るし、そういった力を寄せ集めて生徒と関わっています。

人間には向き不向きも有りますし、苦手なものを好きになる必要は有りません。

でも、自分は苦手だと思っていることでも、まあまあ出来るようになるかも知れない。

やってみることで、自分や他者に対して新しい発見が有るかも知れませんよ。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

通信制高校に在籍する子どものレポートが進まないという悩みに対して出来ること

先日、ある親の会のグループワークにお邪魔した際、

「子どもが、学校のレポートを全然やらずに困っている。」

「親が言っても聞かない。」

という悩みを伺いました。

レポート、スクーリング、テストを三つの柱とする通信制高校において、自宅でのレポート学習は避けては通れないものです。

紙媒体、Eラーニング形式と形は様々ですが、これを期限内に終わらせることが出来ないと、単位習得が出来ず留年に繋がりかねません。

学校によってコースの特色や支援出来る内容は異なるかと思いますが、学習についての不安がある場合、入学前からどのようなサポートが可能かを相談して頂くのが良いかと思います。

私の場合、レポートの重要性を本人に繰り返し伝える、登校時に声を掛ける、保護者と定期的にやり取りをするのは勿論ですが、必要に応じて以下の3つの方法を取ることが多いです。


①レポートをする場所と時間を決める

行動の切り替えが苦手な特性を持っている生徒さんの場合、

「○日の○○時に登校して、2~3時間だけ勉強しよう。」

「授業の空き時間に、~のレポートをやろう。」

「授業が終わった後に、フリースペースで○○時までレポートをしよう。」

と言った促しをします。

普段、ゲームやアニメ、動画視聴等をしてリラックスする場である自宅で、気持ちを切り替えて勉強をするのは中々難しいものです。

そんな生徒には、自宅では無く学校でやることを提案します。

いくつかの選択肢を提示して選んで貰うと、結構納得してやってくれるように思います。

②横について部分的にサポートをする

一つ一つの言葉の意味に囚われ過ぎて進まないケースも有ります。

きちんと理解したいという思い強く、曖昧なのが許せなくて進まない場合、少し語弊は有るかも知れませんが、“いい加減”を覚えて貰うよう指導します。

教科書やレポートの内容を全て理解する必要は無いと伝えた上で、横について

「よっしゃ、解けた!」

「これは、深く考え過ぎると難しいから次行こう!」

というように、極力立ち止まらないように促します。

丁寧に勉強する生徒の姿勢を否定するつもりは有りませんが、〆切があるレポートの場合、時にはサクサク進めることも大切と言うメッセージを伝えます。

③生徒同士のつながりを活用する

教員からの直接的な声掛けより、周りの子を意識させることで頑張る生徒もいます。

例えば、その月のレポートをいち早く終わらせた生徒がいると、私は全力で褒めます。

そうすると、皆案外耳に入っているようで、自分も早く手をつけなきゃマズイかな、と思ってくれるようです。

あとは、生徒たちが自習する様子や、得意科目がある子が苦手な子に要点を教える様子を遠巻きに見守るだけです。


長くなりましたが、これらのサポートもずっと行う訳では有りません。

やり方のコツさえ掴んでしまえば、後は自分で出来るようになる生徒が殆んどです。

保護者の方からの言葉掛けも大切ですが、上手く教員や学校という場も活用して頂ければと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

提案できる関係

詰まらないことで権威を振りかざす人間は嫌いだ。

生徒にやらなければいけないこと、守るべきルールを伝えることも仕事だが、偉そうにする必要は無いと思う。

自分が教員として大切にしているのは、生徒に対して提案出来る関係を築くことだ。

通信制高校で生徒と向き合っていると、登校や学校生活、日々の学習、人間関係など様々な悩みに触れる。

そんな時、一通り話を聞いた後に

「提案なんだけど、まずは~をしてみてはどうだろう。」

という言葉が自然に出てくるかどうかが、自分の技量や相手との関係性を測るバロメーターになっている。

相手にとって必要だと思うことは全力で伝えるが、生徒はNOと言う権利も持っている。

勿論、僕の提案ぐらいではすぐに解決しないことの方が多い。

そんな時は、繰り返し話をしたり、また別の方法を一緒に考える。

そうやって、10代の内に乗り越えるべきことを一つずつ越えていければ良いと思う。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

忘れてはいけないこと

高校で担任をしていると、聞き上手とは言えない私でも、生徒の相談事を聞くことになる。

人間関係についての悩みが多い。

すぐに対策が浮かぶものがある。

苦しさがありありと伝わってくることもある。

生徒が怒り傷ついていること対して、同じくらい腹が立つこともある。

でも、実際の所は良く分からないことや、上手く答えられない場合の方が多い。

31歳になってお腹が出始めた人間が15・6歳の生徒の悩みを聞くのだから、ある程度は仕方が無いと思う。

ともすれば、すぐに自分のフレームワークの範疇で捉えようとしたり、知っている事例を当てはめたり、大人の目から見た解釈をしそうになる。

そうすると、途端に相手との間にある流れのようなものが止まってしまう。

やはり、まずは相手の気持ちをキャッチする事が一番大切なのだと思う。

大人になると忘れてしまいそうになるけれど、小中学生や高校生にとって、今居る学校という場は世界の殆んど全てと言っても良い。

僕は偶々不登校は経験しなかったが、小学生のある時期は学校という場がとても辛かった。

他に世界を知らないし、逃げ場が無かったら尚更だ。

目の前の生徒もきっと同じだと思う。

そういう意味において、学校という場は重い。

それだけは忘れずに、耳を傾けていきたいと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

 

何かを辞めるという決断

高校で仕事をしていると、生徒が学校を辞める場面に立ち会うことがある。

個々の事情は異なるので、一概に良い悪いは語れない。

ただ、自分の気持ちを正直に言うと、苦い思いが残ることの方が多い。

しかし、熟考した上での前向きな決断は、素直に応援したい。

何かを選び取る為に決めたのであれば、例え周りが否定的なことを言おうと、気にする必要はないと思う。

そもそも、何かを辞めたことが無い大人なんて殆んど居ないはずだ。

僕自身、仕事や大切な人との関係、自分の目標を省みても、沢山の「辞める」という選択を重ねて来ている。

自慢出来ることでは無いけど、どうにもならなくて諦めたことを含めると、それこそ失敗は数え切れない。

何にせよ、高校生のうちにやるべきことを継続しながら、自分の心に従って進んで欲しいと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)