学校という場を離れて初めて出合った学び

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

先日、AO入試・推薦入試の志望理由書指導を行う教育企業の経営者さまにお話を伺う機会がありました。

受験を「人生の設計図を描く機会」として位置付ける、素晴らしい取組みだと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

個人的な話ですが、私自身がこうした自己探求の時間を初めて得たのは、所謂普通の学校を離れた、河合塾美術研究所という場所においてでした。

高校生の頃の私は恥ずかしながら、学校や集団に余り適応出来ず、また勉強も不得意で、大学に行く本当の意味も全然分かっていない生徒でした。

そんなコンプレックスと、表現者と言われる人への憧れが相まって、清水の舞台から飛び降りる気持ちで美術予備校の門を叩いた訳です。

同校の総合表現科で師事した木村さんという先生は、技法や方法論を教える美術教育を否定し、自己と周囲への問いかけを通じ、社会に対してアプローチ出来る人を育てる事を意図されていたと私は理解しています。

初めて挨拶をした後、私の顔を見てニヤリと笑いながら「何かやりたいんだろう?」と言われたのを覚えています。

芸大だけでなく慶應SFCやその他のAO入試実施校の合格実績を持ち、授業では論理的に考える為のフレームワークと、ドローイング・マッピングといった直感的手段によって自分の過去と現在を掘り下げ、「ビジョンを持った人間」を育てる事を目指した少人数教育が行われる異色のコースでした。

結果だけ言えば、現役生・浪人生として2度受験した第一志望校の合格を得る事は出来ませんでしたが、自分の原点は間違いなくここにあります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

繰り返しになりますが、私自身は学校という枠組みからドロップアウトして初めて、学ぶことを知りました。

この10年で拡大したAO入試利用による大学入学者増や、その他の受験方式における志望理由の重要性の再認識は、「自分って、どんな人間なんだろう。」「自分は、社会とどう関わるか。」という視点を柱にした教育がより広がっていく流れだと私は捉えています。

この流れに対し、自分はどう関わる事が出来るのか。

それを考えると、静かな興奮が沸き起こってきます。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

オープンキャンパスでまず伝えるべき事とは

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

この時期、多くの高校では入試説明会に先立ち、オープンキャンパスやオープンスクールが開催されています。

お付き合い先の学校を始めいくつかに訪問させて頂きますと、授業の一部を体験させるもの、早い段階で入試対策について触れる学校、外部の特別講師を招聘する学校、複数回実施し回を重ねるごとに異なった内容を用意する学校など、実に様々です。

ここで少し立ち止まって考えてみたいのですが、そもそもオープンキャンパスで伝えるべき事とは何でしょうか。

自校の魅力、各学科・コースの特色、サポート体制、教職員の方々の人となり、授業の様子、進学実績、部活動・・・などなど。

どれも間違っていないと思います。

参加者の自校に対する関心を高めることで、次回のイベントや入試説明会に誘導し実際に受験させるという目的が、生徒募集を考える上での一つの正解になるのでしょう。

しかし、「まず伝えるべき事は何か」と考えた場合、個人的には

●高校生になるとは一体どういうことか。

を伝えるのが最も大切なように感じます。

多くの生徒さんは高校進学を当たり前のことと考えているかも知れませんが、高校進学という事自体は本来主体的な一つの決断であるはずです。

私が実際に見学に伺った高校では、体験授業や学校説明の場で、中学校や高校・大学での学習との違いや、今が人生の中でどういう位置づけの時期なのか、そもそも学ぶとはどういう事かを先生方の言葉で伝える時間を持たれていました。

つまり、

①「先生達は、学ぶという事や高校での学習とはこういう事だと思っている。」⇒②「ウチの学校では、こんな取り組みをしている。」⇒③「君達自身は、何の為に勉強しようと思っているの?」

というように生徒に問いかける流れを持っているのです。

多くの学校では、ひたすら②を伝える事に終始しているのでは無いでしょうか。

これは、極端な言い方をすればただの押し売りになりかねません。

勿論、学校のカラーやブランド、歴史やカルチャーによって追求すべきオープンキャンパスの形は異なります。

あくまで個人的な意見ですが、きちんとした情報と先生方の姿勢を伝えた上で、生徒自身に考えさせる機会を提供する形が私は理想だと思っています。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

砂に水を注ぐ十年

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

先日、東海地方の或る私立高等学校さまの学校説明会にお邪魔させて頂く機会がありました。

3日間で3,000名を超える中学生・保護者らが集まるこの説明会の核は、先生方が腕によりをかけた80講座以上の体験授業。

現在では県下の進学校として知られる同校ですが、その評価は一朝一夕で築かれたものではありません。

事実、多くの私学が経験してきたように、過去には苦難の時代が存在します。

その中で、学校を変える為に先生方が暗中模索で始めたのが、前述した授業力の向上を目的とした体験授業の発信でした。

授業改革の過程を、ある先生は次のように喩えています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

手で水を抄くって砂に注ぐと、音も無く吸い込まれます。

繰り返し、繰り返し注いでもやはり吸い込まれて行く。

それを十年繰り返していたら、ある時点でふっと砂の表面から水が湧き上がってきた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

同校の説明会を体験すると、運営する先生方も、それを手伝う生徒さんも、本当にイキイキした表情をされています。

説明会で出会った先生の人柄や、在校生の振る舞いを目にして受験を決める中学生が多いということも頷けます。

この学校が行ったのは、小手先の生徒募集施策やマーケティングといった事ではありません。

現場の先生方一人ひとりが、「この学校は何故存在するのか」「自分達は何をすべきか」という原点に立ち返り、教務という教育の根幹から学校を変えて来たのです。

ただ、それだけです。

こうありたい、と思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

高校でfacebookを活用する際に準備すべきガイドライン

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

日本で2,000万人近いユーザーが存在すると言われるフェイスブック。

ソーシャルメディアは、自校に対する顕在・潜在的な関心を持つ人々に情報を届ける事の出来る有効な資源です。

一時に比べるとブームに翳りが見え始めたという意見もありますが、

●活用する明確な目的

●受け手が求めるコンテンツ

●継続する気持ち

の3つがあれば、強力なマーケティングツールとなります。

(特に、HPやパンフレットでは伝える事の出来ない「今」の情報や、外から見えない日常の取り組みを伝えられる点に強みがあります。)

ただ、中学や高校・大学といった学校法人で活用する場合は、予めガイドラインを作成する事をご提案致します。

というのも、複数名の教職員で運用する場合、コンプライアンスへの理解やネットリテラシーにも差が生じますし、それを見る生徒・保護者・地域社会の反応を考えると、最悪の場合にはクレームやいじめ、炎上へと繋がる恐れがあるからです。

このような問題を未然に防ぐ為に必要となってくるのが、SNS活用上のガイドラインです。

A4用紙1~2枚の文面で結構ですので、著作権やプライバシーの基準、機密情報、個人情報、その他リスクに関してまとめ、共通認識を持たせる事が効果を発揮します。

(基本的な事ですが、人物が映っている写真は予め許可をとる、或いは個人が特定し難いように小さく写すといった配慮も大切です。)

せっかくのツールを、何かあると恐いという消極的な理由だけで利用を制限してしまっては、機会の損失になりかねません。

是非、学校の魅力を発信する為に、ルールと共通認識を持った上で効果的に活用頂ければと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

放課後等デイサービスと専門学校との接点

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

以前医療系専門学校をご訪問させて頂いた際、その敷地内で附属の鍼灸院を目にしたことがあります。

専門学校が付属の医療施設を持つことには、

①質の高い実習機会の提供、②差別化による生徒獲得、③地域社会と関与する窓口の確保

といった効果が期待出来ます。

国家資格に対応した認知度の高い職種がある一方で、放課後等デイサービスの分野はその歴史が比較的若いこともあり、在学中に直接触れ、進路として選択していく仕組みはまだまだ整っていないように思います。

宮崎市にある宮崎保健福祉専門学校は、専門学校が放課後等デイサービス事業所を持つ非常に稀な例の一つです。

同校は、介護福祉、作業療法、精神保健福祉に関する3学科を有しており、事業所内ではプレイセラピーを中心とした発達を促す取り組みや、自立の為のプログラムが提供されています。

それぞれの学科の専門知識を元に児童生徒の生活技能訓練の場に関与出来るという事は、放課後等デイ業界へのルートの提示に留まらず、ライフイベントに応じたサポートを行う支援者としての基盤を養う上でも非常に大きな意味があります。

放課後等デイと学生を繋ぐ素晴らしい取り組みとして、共有させて頂きます。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)