服育

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

先日、購読しているミキハウスさんのメールマガジンを開くと、『服育特集』という単語が目に飛び込んできました。

食育、という言葉は聞いた事はありましたが、こんな言葉があるんですね。

調べてみると、大阪の株式会社チクマさんが提唱されたもので、衣服を通してTPOやマナーといった社会性を育てる事を企図したものだそうです。

単に消費者の購買意欲を刺激するのでは無く、商品を通して「○○を育てる」という価値のシフトはとても面白いですね。

同社のHP(http://www.fukuiku.net/toeducator/seminar.html)では、小学校・中学校・高校といった学校現場に対する、衣服に関する出前授業の情報も公開されています。

実際、衛生的な服装への意識や場に応じた身だしなみを獲得する事は、ソーシャルスキル(社会技能)トレーニングの上でも重要です。

マーケティングの面でも、教育性の追及という面でも非常に意味深い取り組みだと思います。

チクマさんの例以外でも、自社の商品の存在理由を見直す事で、まだまだこうした価値は見つけられるはずです。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

校内掲示物を活用した専門学校のキャリア教育事例

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

船井総合研究所に入社して3年目になります。

自分が日々周囲の方々にご指導頂いて来た事から考えると、社会人になるというのは、

●これまで自分が育ってきた小さな世界で身に着けた思考パターンではなく、社会の中で仕事をしていく為に必要な価値基準と習慣を身に着けること。

であると認識しています。

こうした「価値観の転換」を求められているのは、就職活動に入る専門学校生や大学生の方も共通するものがあるかと思います。

私が過去に訪問させて頂いた文化・教養関係の学科を持つ関西の専修学校さまでは、就職課の窓口脇の掲示板いっぱいに、就職活動をする上で必要な心構えが貼られていました。

大きな文字で所狭しと掲示されているのは、就職の意義や、各業界の募集の慣習、履歴書を書く上での原則といったもの。

中には、

●「会社訪問の前には必ず所在地を下見する事!」

●「面接試験の最後には必ず質問をする事!」

という大変具体的なアドバイスもありました。

全体を通じたメッセージは、「授業を受ける側の受身の存在としての学生」から、「能動的に行動する社会人」への移行を促している点です。

あくまで想像ですが、この学校の先生方は、授業やその他の指導の場面でも、上記のメッセージを繰り返し繰り返し伝えられているのでは無いでしょうか。

先ほどの「大事な約束の前にはきちんと下見をする」という言葉も、この習慣を持っているかどうかで、試験や面接といった勝負時に発揮する力も違ってくるように感じます。

もっと言うと、その後の仕事や人生までも変わるかもしれません。

校内掲示物も、日々の指導と連動させる事で、キャリア教育・就職支援を行う上で大きな効果が期待出来ます。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

発達障害のある新入生を迎える大学がすべき事

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

全国で、入学式や入社式のニュースが聞かれる4月になりました。

急な環境変化への適応や、人間関係上の苦手を持つ発達障害のある当事者さんにとっては、特にストレスが多い季節だと思います。

実際、こうした大学生へのサポートを専門にされている支援者さんにお会いすると、

●大学に合格したのに、入学後の宿泊型のオリエンテーションで躓き、不登校状態になってしまった。

●単位履修の仕方が十分に理解出来ず、誰にも相談する事が出来なかった。

という話をしばしば伺います。

ある種の感覚上の過敏さを持つ方にとって、宿泊型のイベントは苦痛や刺激に満ちており、非常に敷居が高いものです。

また、キャンパスでは親しくなった者同士で「履修科目どうする?」と相談し合う風景が至る所で見られますが、仲間関係を築くのが不得意な人にとっては、そういった輪に入るのは困難です。

(それ以外にも、アナウンスの聞き漏らし、掲示の見落としがあったり、同学年の生徒をモニタリング出来ていない為に、「周りの人がやっているから、自分もやらなきゃ。」という考えに至らない事も考えられます。)

こうした生徒に対して、大学教職員がすべき事は何でしょうか。

最も必要なものは、

●障害の疑いのある相談者の話をよく聴くこと。

●生徒、保護者、場合によっては高校進路担当者と連携を取り、入学前から人的なサポートの体制を整えること。

にあります。

(後者に関しては、保護者や高校の教員が支援のニーズを自覚していないと難しいですが・・・。)

前述した入学後の躓きに立ち返ると、

●障害特性の為に宿泊型のオリエンテーションが難しいと申告して来た生徒には、別途個別のガイダンス日を設ける。

●履修上の悩みは教務課、心の悩みは学生相談室、進路に関する悩みはキャリアセンター、というように相談の為の資源を明示する。

と言ったことで、スムーズに大学生活へと繋ぐ事が出来ます。

ただ、現場の教職員の方の中には、「その生徒だけ特別扱いは出来ない。」「甘やかしでは無いか。」「そんな事では、卒業後に社会で通用しない。」という誤解をお持ちの方もいらっしゃると思います。

ある意味では、それは正しい事なのかもしれません。

ですが、

●「障害特性の為に現時点で困難な事があるのであれば、飛び越えられる別のハードルを設ける。」

というのは、必要な教育的配慮だと私は思います。

今は出来なくても、これからの大学生活の中で徐々に獲得していく事は沢山有るのですから。

先ほどのオリエンテーションの例で言えば、別日程を設け、その約束をきちんと守るよう約束する事は、甘やかしではありません。

障害特性に対する正しい理解と、教職員の方々の対応・伝え方次第で、解決出来る事はまだまだ沢山あります。

是非、様々な背景を持つ生徒が充実した大学生活を送れるような学校づくりを一緒に進めていきましょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

遠隔授業の発展と通信制高校の存在理由

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

2013年3月27日の日本マイクロソフトの発表で、『大阪府教育委員会、日本マイクロソフトと連携して全府立高校を対象に遠隔授業サポートシステムを提供』する、というニュースがありました。

今回のシステムは、音声と映像をリアルタイムで届けあう通信技術によって、長期入院中・自宅療養中の生徒の授業参加を可能にし、学習上の遅れを防ぐ事が出来る、というものです。

(府教委の発表では、将来は自宅や病院での勉強を単位認定することも視野に入れ、難病の小中学生や不登校の生徒への活用も検討されている事が伺えます。)

クラウドサービスの発展によって、登校が困難だった生徒の教育機会が保障されるのは大変喜ばしい事です。

ただ、全国に約250校あり、19万人近くの生徒が在籍する通信制の高校にとっては、自らの存在理由を再定義しなければならない転換点が訪れたと言えるかと思います。

というのも、通信制高校は

●「全日制・定時制の高校に通学することができない青少年に対して、通信の方法により高校教育を受ける機会を与える」こと

をその定義とし、事実上、不登校状態にある生徒や、中途退学の経験を持つ生徒の進学先としての役割を担ってきた歴史があります。

(念の為補足しますが、全ての学校がそうではありません。また私自身は、そういった学校を運営され、日々生徒と向き合っておられる先生方に個人的な敬意を感じています。)

少し想像の飛躍があるかもしれませんが、今回の大阪府の取り組みは、

●高卒資格を取得する為の、代替的な機会の提供のみに存在理由を見出している通信制高校は、今後縮小せざるを得ない。

という流れを示しているように思われます。

自校の役割の再確認と、積極的に選ばれる為の魅力の創出が必要な時期が来ていると言えるでしょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

高等学校が創る学習支援センターという資源

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

高校生の頃、「学校の授業が難しくて置いてけぼりになってしまった」という経験をお持ちの方はいらっしゃらないでしょうか。

私はあります。

全国高等学校PTA連合会が2009年に行った調査では、高校生の4人に1人が「授業が難しくてついていけない」と感じている、という結果が示されています。

このような現状を踏まえ、校内に『学習支援センター』を設け、積極的なサポートをされている高等学校さまがおられます。

東京都内の例で言いますと、かえつ有明中・高等学校さん、八王子実践高等学校さん、等々力中学校・高等学校さん、武蔵野中学高等学校さん、女子聖学院中学校高等学校さんの取り組みが知られています。

これらの取り組みを概観してみますと、学習支援センターの原点は、

●生徒が自学自習を行う事が出来、講習の受講や教員への質問が出来る場所と時間を設ける。

と言う点にあります。

一見シンプルですが、学習・質問が出来る「場所」「時間」を明示する事で、学習習慣の獲得と構造化がなされる為、十分な効果が期待出来ます。

前述した学習センターの機能を充実させた例として、ハイレベル講座、英検・漢検など各種講習を付加したり、進学指導を行うものもあります。

また、個別ブースを設け集中しやすい環境づくりをしているケースや、夜21:00まで利用可能な学校もあります。

しかし、学習支援センターの進歩は、これだけにとどまりません。

さらに先進的な学校では、

●学習支援センターのサポート体制のシステム化

を進められています。

具体的には、

●「単元別のテスト⇒分析⇒補習」のサイクルを回す事による学力向上施策

●ビデオ教材、eラーニングシステムの導入

を行い、更に生徒の学力向上に関与する形を取っておられます。

学校が持つ役割と責任を、授業外にも広げて認識されている好例と言えるかと思います。

ただ、必ずしも支援内容とコンテンツを増やせば良い、という訳でもありません。

学校が目指す方向や、生徒のニーズ、現在の校内資源を鑑みながら、自校に合ったオリジナルの学習支援センターを作る事が理想と言えるでしょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)