学校説明会における座談会コンテンツ

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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昨年の夏にご訪問させて頂いた東海地方の私立高等学校さまでは、学校説明会のコンテンツとして『生徒・保護者による壇上での座談会』を導入されていました。

一般的な生徒募集の場では、教職員による学校の魅力のアピールがメインになる場合が多い為、これは画期的な事と言えるかと思います。

座談会の形式は、長机に生徒2名・保護者1名が腰掛け、司会者の質問に答えていくという、シンプルなもの。

内容としては、1名目の普通クラスの生徒が、学習上のサポートや部活動の事を、2名目の特進クラスの生徒が、指導体制や周囲にも応援して貰いながら学んでいる事を自分の言葉で話していました。

先生と生徒の掛け合いからも、普段の学校生活をイメージするのに十分なものでしたが、最後の保護者のコメントは、非常に印象に残るものでした。

その方は、

●子どもが以前通っていた中学校ではいじめがあり、高校でもいじめが起きないかとても不安だった事。

●この学校は先生と生徒の雰囲気がとても良く、いじめなど無かった事。

●今は、勉強も部活動も一生懸命取り組んで、楽しみに学校に通っている事。

を、訥々とした口調で語っておられました。

不特定多数の前で、こういったデリケートな事を話すのは、大変勇気が要る事だと思います。

折りしも、滋賀県大津市の出来事が記憶に新しい時期であった為、受験生や保護者でなくても、その声に思わず聞き入ってしまうものでした。

余談ですが、このように第三者からの評価を伝える事によって、購買行動を妨げるような不安を取り除く手法を、船井流のマーケティングでは『信用訴求』と呼んでいます。

上記の座談会は、その点を効果的に活用している例と言えるでしょう。

ただ、「そうか、説明会で座談会をすれば良いのか。」とだけ取られてしまうと、古い諺に言う画竜点睛を欠く事になります。

というのも、この学校では現場の先生方主導で、10年以上の年月をかけて今ある学校の形を作られてきた、という経緯があります。

その結果が、今の学校のカルチャーや、生徒・保護者・地域からの評価として結実しています。

本当の意味で何かを変えるには、10年以上の時間がいる。

身が引き締まる思いのする言葉です。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

職業能力開発大学校という選択

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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春分が近づき暖かさを感じる中、全国では卒業式が行われている時期かと思います。

そんな中、3月中旬のニュースで『この春卒業予定の高校生の就職率が、今年1月時点で88.3%になった』という厚生労働省発表の数字を目にしました。

この数値は3年連続で改善はしていますが、リーマンショック前である平成20年の-1.1ポイント水準であり、就職を希望する高校生17万人のうち、2万人余りが就職が決まっていない状況になります。

一定の改善は見られるものの、高校を卒業後すぐに仕事繋がるのは依然容易ではありません。

では、高校卒業予定者が仕事に関する知識・技能を習得したいと考えた場合、どのような社会資源があるのでしょうか。

その答えの一つに、『職業能力開発大学校』を利用する、という選択肢があります。

職業能力開発大学校は、高度な知識と技能・技術を兼ね備えた実践技能者の育成を目的とした厚生労働省所管の職業訓練施設で、学費も他の進路に比べて安価な場合が一般的です。

私が住んでいます近畿圏では、下記の4施設が置かれており、電子情報技術科や生産技術科、住環境科、流通・物流に関するコースが設けられています。

近畿職業能力開発大学校

附属滋賀職業能力開発短期大学校

附属京都職業能力開発短期大学校

港湾職業能力開発短期大学校神戸校

学校によっては、ものづくりの魅力や楽しさを伝える為の「出前授業」を実施し、出前授業のメニューを公表しているHPもあります。(http://www3.jeed.or.jp/osaka/college/highschool/index.html

高校1・2年生の段階で、進路を考える機会としてこれらのサービスを活用するのも、キャリア教育上有効な施策と言えるでしょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

発達をサポートするという視点

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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土曜日の日中はお休みを頂いて、特定非営利活動法人ノンラベル主催の『アスペルガー支援者養成講座』に行って来ました。

(「発達障害」というキーワードは、学生時代に不登校や中途退学について学ぶ中で出会い、今も個人的なテーマの一つになっています。)

今回は、ゲスト講師として、

●『30歳からの社会人デビュー―アスペルガーの私、青春のトンネルを抜けてつかんだ未来』(花風社)

の著者である藤家寛子さんをお招きし、後半にはニキ・リンコさん、花風社の浅見淳子さんとの対談まで伺うことが出来ました。

正確な内容は、花風社さんが出版されている書籍をお読み頂くのが一番かと思いますが、自分なりに咀嚼してのみ込んだポイントは、

①社会で生きていくには、(障害の有無に関わらず)強くならなければならない。

②支援者は、「世の中は障害の事を分かってくれない・・・。」というような誤った社会観を植えつけてはいけない。

③社会で生きていくのは、実は結構楽しいし、それによって楽になることもある。

という三点です。

シンプルですが、非常に重みのある言葉です。

この①~③をよくよく吟味すると、詰まるところ、

●人生の初期段階で、どんな支援者(保護者・学校の先生・ワーカー・ドクターなど)と出会うか。

がかなり大事な要素になってくるように感じます。

すなわち、その支援者のもとで、自己の課題を適切に理解し、体力やソーシャルスキルを身につけ、未来に対する前向きな期待を養っていく事がとても重要だということです。

これらは、我々が担う教育の仕事の本質を示しています。

知識や技術を習得させるのも学校やスクール業の大切な役割ですが、「生徒の発達をサポートする」という役割を再認識する事で、これまで以上にサービスに幅と深みが生まれてくるはずです。

実際にこれらの課題に取り組まれている学校さまについては、また別の機会にご紹介していきたいと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

ギフトショーで見たデザインの力

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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昨日は、お付き合いのある社会福祉法人さまのブースへお邪魔する為に、

『第49回大阪インターナショナル・ギフト・ショー春2013』

へ行って参りました。

(今回の出展計画は、兵庫セルプセンターさんが中心になって進められたもので、関西圏で選ばれた作業所をはじめとした複数の団体が、アクセサリーや雑貨、菓子と言った商品の展示をされていました。)

展示を拝見してまず感じたのは、そのデザインのレベルの高さです。

ただ売るのでは無く、商品を使用するシーンや、背景にあるストーリーまで意識されている事が伝わってくるものでした。

ここで、私なりに「良いデザイン」定義すると、

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.【誰に伝えるのか?】・・・対象の選定

2.【何を伝えるのか?】・・・顧客が享受する価値

3.【何をもって伝えるのか?】・・・媒体の選択

4.【より伝わるようにするには?】・・・価値の伝達レベルの向上・美的な効果の追求

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

という4つの問いへの答えが明確で、一貫性がある状態、と言えるかと思います。

これらの点が熟考されている商品には、真っ直ぐに相手の心に届く力があります。

それと、もう一つ感じたのは、今回出展された作業所の殆どが「障害」「福祉」というキーワードを前面には押し出していなかったことです。

売り方に必ずしも正解・不正解がある訳ではありませんが、「お客さんにとっての商品の価値」を追求された顕れ、というように私は受け取りました。

それにしても、商品の価値の伝え方次第で、消費者との関係がこんなにも近づくものなんですね。

デザインが持つ力に、胸が高鳴る思いでした。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

大阪市教育振興基本計画案に見る英語教育の時流

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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先日、大阪市が取り組む『グローバル化改革』に関する資料を頂く為に、大阪市教育委員会事務局を訪問して参りました。

本計画では、

●積極的に自分の考えや意見を伝える事が出来る英語コミュニケーション能力の育成

を目的とし、英語教育について大きく2つのプランが示されています。

一点目は、小学校から中学校まで一貫した『音声・文字・発音の総合的な英語教育』の実施です。

具体的には、音声指導重点校として(24小学校・8中学校)が設定され、学習メソッドとして「フォニックス」が採用される見込みとなっています。

フォニックスは、英語の発音とアルファベットの間の規則性を習得させるメソッドであり、英語学習上の単語の読み書きでの躓きを改善する効果も期待されます。
(私が中学生の頃は、辞書や教科書の裏表紙に載っている発音記号表と睨めっこをしながら、怪しげな発音をしていたのですが、これから学ぶ子は、より英語らしい発音が出来る訳ですね。)

民間の英会話スクールでは、

●Berlitz kids(http://www.berlitz.co.jp/kids/

●ECC KID’S WORLD(http://www.kids.ecc.jp/

等で、年代と習熟度に応じたプログラムが導入されています。

二点目の英語教育の目玉は、ICT(Information and Communication Technology)の有効活用です。

まだ詳細は不明ですが、「アジアなど海外の小・中学校と連携し、英語で学びあう機会づくり」「双方向のコミュニケーション」「情報活用能力の育成」「協働学習や個別学習の充実」が盛り込まれており、コミュニケーション手段としての英語の活用が重視された内容となっています。

これらの政策に関しては賛否両論があるかもしれません。

また、正確な効果に関しては継続的な実証研究を待たなくてはなりません。

ただ、

●学校教育に関わる者は、単に英語を教授するのでは無く、その目的とメソッドに関して明確な指針を持たなければならない。

●また、その手段であるICTの活用方法に関しても、ビジョンを持たなければならない。

という時流を明確にした点において、非常に意味のある計画案であると感じます。

これから、どんな個性的な取組みをする学校が出てくるのか、目が離せません!

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)