自分の席からは見えないもの

9月に入ってから、先輩教員に声を掛けて頂いて、キャリア教育やICTに関するプロジェクト会議に出席させて頂いた。

私の職場は、全国に拠点を持つ広域通信制高校なので、本部職員と各キャンパスの有志の教員が定期的に集まり、こうしたプログラムを作りあげている。

スケールメリットを活かした教育作りに取り組む先生方の様子を目の当たりにすると、自分の出来ていること、出来ていないことが良く分かる。

視点の高さ、と言っても良いかも知れない。

普段、職員室の椅子に座っていると、どうしても目の前の仕事や、自分のクラスの生徒ばかりに目がいってしまう。

勿論、一番は目の前の事だ。

しかし、自キャンパスに対しても、全国のキャンパスに対しても、もっと出来ることは有るんじゃないかという思いが湧いて来る。

この日声をかけて頂いたのは、会議の中で、googleフォームを活用した業務の効率化を提案することが目的。

キャリア授業の中では、単元ごとの理解度を測る為に紙のアンケートを頻繁にしているし、それをキャンパスごとで整理し、全国で共有するのはとても手間がかかる。

それを、WEBアンケートフォームを活用する事で各キャンパスの負担を減らし、情報共有、フィードバックを容易にしようというのが私の提案だ。

予め作って行ったサンプルを見せると、どの先生もすぐに狙いを理解して下さり、是非やろうという結論に。

この仕組みは、生徒の満足度調査にも使えるし、複数キャンパスを持つ学校だからこそよりメリットも際立ってくる。

教育の世界に飛び込んで2年目。

会社勤めをしていた際に教えて貰った考え方やツールが、色んな場面で役に立ってきそうです。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

好奇心のアンテナ

先週末に終業式があった。

4月からあっという間だ。

教員の私がそうなのだから、新1年生も同じような思いだろう。

皆何かしら、中学校時代とは違う自分を発見したのでは無いかと思う。

 

前期の最終週は、進路学習に充てられた。

進路の考え方や受験制度の学習、大学の講義の聴講、専門学校の体験授業といった類のものだ。

狙いは、どんな選択肢があるかを知り、早い段階から自分の将来について考えて欲しい、という点にある。

生徒の反応を見る限り、大学の講義を聞くことはまだ少し難しかったかも知れない。

それでも、講義内容を必死にメモしたり、手持ちの知識と関連付けながらイメージを膨らませたりして、一つでもキーワードを持ち帰ろうとしている生徒も何人か見られた。

その一方で、授業を漫然と聞いている生徒や、早々に理解を諦めている顔もある。

両者の能力の差は、遠くから見ればそれ程大きいものでは無い。

一番の違いは、未知のものに対し、好奇心を持って取り組めるかにあるように思う。

(勿論、進路に対する動機付けや、聞くための姿勢を習得させるといった教員側の仕事もある。)

高校生活はまだ始まったばかり。

自分の欲求や周囲の情報にアンテナを向け、良い夏休みを過ごして貰えればと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

 

弱さと付き合う

自分の事を、胸を張って好きだと言える高校生はそう多く無い。

大抵の場合、勉強や対人面での苦手意識があったり、うまく自分を出せなくて悩んだりする。

自分が生まれ持ったものや、所属する集団、家庭環境に根ざした苦しみもある。

それをバネにしてする努力は尊い。

でも、刻苦して乗り越えられる事ばかりでは無いし、すぐに解決出来ないこともある。

そう考えると、例え嫌いな部分があったとしても、それと付き合いながらやっていくしかない。

明治の文豪夏目漱石は、門下生に送った手紙の中で、自身の死生観に触れながら次のように述べている。

「私は今のところ自殺を好まない。恐らく生きるだけ生きているだろう。そうして、その生きているうちは普通の人間の如く私の持って生まれた弱点を発揮するだろうと思う。私はそれが生だと考えるからである。」

(三好行雄 編『漱石書簡集』岩波文庫 より引用)

生きることは、弱点を発揮することだとまで言っている。

こんなこと、なかなか言えない。

漱石自身は、日本の近代という大きなうねりに直面し、苦しみながら書き続けた人である。

傷だらけになって生きた人がこんな言葉を遺していると思うと、何やら救われるような気がします。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

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募金活動

4月下旬に熊本地震に対する募金活動を企画した所、即座に50余名の生徒が手を挙げ参加してくれた。

一年生が積極的に取り組んでくれた事がとても嬉しい。

話を聞いてみると、家族が九州出身だと語る生徒や、東日本大震災で被災した経験を持つ生徒も居て、彼ら彼女らは自主的に事前準備に励んでくれた。

皆が想像力を働かせ、自分達に出来ることをした結果だと思う。
金額は割愛するが、4日間に渡って大阪駅前に立ち、本当に多くの方のご協力を頂くことが出来た。

生徒の中からは、活動を一過性のものにするのでは無く、どうしたら必要な支援を継続出来るかを考え、調べ始める生徒も出てきている。

僕には魔法のような答えは有りませんが、一緒に考えて行きたいと思います

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

高校生が現代社会について知るべきこと

高校生にとって、家族は煙たい存在かも知れない。

例え肉親であっても、違う人間なのだから好きになれない所があっても無理はない。
親への感謝を説く人も居るが、個々の事情もあるし、そもそも人にすすめられてするものでは無いと思う。

しかし、保護者の庇護のもとを離れると、自分を守ってくれたり、何かを与えてくれる存在など無いのも事実だ。

高校で学ぶ「現代社会」のページをめくってみても、それは分かる。

例えば、人間の権利について。
現実の世の中では、諸々の権利は最初から無条件に与えられた訳では無い。
長い年月と、人々の血が流れて獲得されたものだ。
しかも、この先ずっと変わらずあるとは限らない。

例えば、経済活動について。
生きていく為には、時間を労働に変え、自身の才覚でお金を得なければならない。
自分の中の何かを売って、物を買うわけだ。
誰もタダでご飯を与えてくれたりしない。

気に入らない事があったとしても、文句だけ言っていても始まらない。
もう後何年かしたら、自分の力で生きていかなければならない。

では今、何をしたら良いか。

まずは世の中の成り立ちやルールを知り、自分自身を富ませる為の努力をする事が先決だ。
何をしたら自分が豊かに生きられるのか、少しずつ考える必要があると思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)