短い言葉

いつも有難うございます、水溪です。

iPhoneの『たて書きコラム』というアプリを気に入って使っています。

全国紙・地方紙を含む50紙以上の新聞のコラムが一覧出来るものです。

(Androidを愛用されている方ですと、『社説ビューア』と言ったものが同様の機能を持っています。)

先月末から続くイスラム国に関する報道では、日々不安な気持ちで新聞やニュースサイトを見ていましたが、日経の春秋というコラムに、はっとするような文書が掲載されていました。

▼「相手が用意した劇場から出なければいけない」と山田英雄・元警察庁長官が本紙で語っている。怒りを持つのは大切なことだ。テロに屈してはならない。けれど狂信者が勝手にこしらえた芝居小屋で高ぶるばかりでは連中の思うつぼではないか。ネット空間には勇ましい極論があふれているが、いま必要なのは冷静さだ。

(出典:2015/2/5 日本経済新聞 朝刊)

勿論、春秋のコラムは今回の犯行を卑劣な行為として強く非難した上での文章です。

この数日の他紙コラムの殆どは、事件に対する憎悪の表明に終始した文章が目立っていたように思います。

人命の重さ、テロの存在、今後の法制度等、問題の根深さを考えると無理はありません。

しかし、そのような状況だからこそ相手が用意した劇場から出なければいけない。

とても短い言葉ですが、勇気と自制心を求める強い言葉と感じました。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

学び直せる場

いつも有難うございます、水溪です。

近頃、中学・高校分野の数学復習の為の書籍を持ち歩いています。

移動中や喫茶店で鞄から取り出してページを繰るのですが、目を通してすぐに思い出せるところもあれば、ペンを持って手を動かしてみないと頭の回路が繋がらない箇所もあります。

勉強したはずのことでも、時間が経つと忘れてしまうものですね。

話は少し変わりますが、全国で80校を上回る数となった広域通信制高校でも、中学分野の数学復習の機会を整えている学校が見られます。

本来通信制高校は、様々な理由で全日制・定時制の高校に通学出来ない生徒を対象に整備されたものですので、こういった基礎学習は最小限に留め、その他の活動を重視する事も可能です。

日常生活に関して言えば小学校の算数が身についていれば困ることはありませんし、全日制普通科では得る事の出来ない体験学習に重きをおくのも一つの形だと思います。

ただ、既に自分の理想の職業を決めている生徒を除いては、基礎学力修得の機会喪失が、進路実現の可能性を狭めてしまう恐れがあるのも事実です。

例えば、看護をはじめとした医療系分野では数学が問われますし、農業や工学といったものを産み出す仕事に関心がある場合も理系の勉強が必要となります。

この他にも、文系学部として知られるカウンセラーの仕事なども、より専門的に学んでいく上では統計学を勉強しなければなりません。

これらの大学レベルの数学は殆どが高校で学ぶものですし、それを支えるのは中学の分野です。

時間はかかるかも知れませんが、もし中学段階の内容に不安があるのであれば、そこまで立ち戻って学ぶのが一番近道であるように思います。

その意味でも、中学分野をフォローする為の授業を整えたり、イーラーニング等を通じて復習が出来る学校はとても理想的な場です。

苦手な分野があれば何度でも立ち返って学べば良いし、学校としてそれを応援する。

そんなメッセージの表れであるように感じます。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

障害特性による苦手を解決するPDCA

いつも有難うございます、水溪です。

先日、NPO法人ノンラベル主催「自閉症スペクトラム障害支援者養成講座」にて、ASD当事者として知られるしーたさんの講演を聴講させて頂きました。

しーたさんのプロフィールと活動、著書に関しては下記のサイトで詳しく知る事が出来ます。

⇒しーたさんブログ(http://ameblo.jp/asupe-san/

今回の講演で特に感銘を受けたのは、氏が自身の障害特性による苦手を解決する為に実践されているPDCAサイクルの話題。

ビジネスの現場における業務改善の為のフレームワークとして知られるPDCAですが、療育に落とし込む上でポイントとなるのは、苦手なこと(課題)の難易度を見極めることにあります。

(一口に「苦手」と言っても、これまで殆ど出来たことが無いような難易度が高いものから、出来たり出来なかったりするようなものまで、難易度にも幅があります。まずは、比較的ハードルが低いものから克服していく事が鉄則です。)

難易度が比較的低く今取り組むべき課題を明らかにした後に、タスクが上手く出来るとき・出来ないときの違いの分析の実施、環境調整、実行、評価、改善を繰り返して行く事で、少しずつですが仕事や日常生活上の困難をクリアしていくことが可能になります。

言葉で言うのは簡単ですが、とても知的で、根気が求められる作業ですよね。

何よりも、前向きに取り組み続ける姿勢が欠かせない事を学んだ講演でした。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

ゆっくり話す

教育・福祉業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

個人的なことですが、私はどちらかと言うと早口な方です。

元々が緊張しやすい気質な上、どうにかして相手に必要な事を伝えようと思うと、どうしても焦ってしまうところがあります。

お客さんの前でお話させて頂くときは、兎に角「ゆっくり話そう」といつも念じています。

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~余談~

小学生ぐらいの頃、テレビである映画俳優が役作りについて語っているのを見たことがあります。

20年以上昔の事ですし、見たことのない映画なので、細かい筋はわかりません。

ふとした拍子に起こしてしまった罪(か冤罪)によって、長期間服役していた男の出所後を描いた映画。

確か、そんなストーリーだったと思います。

男は、今まで失った時間の重みを感じ、人生をやり直そうと焦っている。

難しいこの役柄をどう演じるか。

その俳優が出した答えが、「ゆっくり話す」というものだったそうです。

自分に残された時間に焦りを感じているからこそ、人に何かを伝え損なったり誤解を与えることが無いよう、一つ一つの言葉を確実に話す。

こう言った着想から役作りをしていったという話でした。

何か、不思議なリアリティを感じます。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

教育者が準備すべき小さな失敗が出来る環境

教育・福祉業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

広汎性発達障害の傾向を持つ成人の方の就労支援を行う現場では、実現不可能な希望に対するブレーキをかけ、適切な目標設定と具体的ステップを示すのも支援者の役割であると言われています。

現実検討能力に課題がある方にとっては、長期の無業化や不必要な挫折体験、ひきこもり化を未然に防ぐ為にもこうしたサポートが意味を持ってきます。

ただ、何をもって「実現不可能」と判断するのかは非常に難しい問題です。

生育暦や障害特性に基づいた医療関係者・福祉職の判断がベースになるのは間違いありません。

しかし、あえて誤解を恐れずに言えば、究極的には何が実現不可能であるかなんて誰にも分かりません。

(事実、周囲から「向いていない」「無理」と言われた職業を、不断の努力によって実現された当事者の事例を書籍を通じて知る事が出来ます。周囲の提案は、あくまで確からしさに基づいたアドバイスです。)

とりわけ、もう少し下の年齢の方や、学齢期の方の教育を行う現場においては、安心・安全な学びの場を提供すると同時に、試行錯誤の場を提供することが重要になってくるのではないでしょうか。

具体的な例を挙げますと、昨年ご訪問させて頂いた関東のある通信制高校さまでは、保育分野に関心を持つPDD-NOSの生徒さんに対し、保育園での定期的な職業体験の機会を設けておられるという話を伺いました。

(一般には、保育園や幼稚園の先生は同時に沢山の児童を見なければなりませんし、保護者の対応や心理的な相談も含め、非常にハードルが高い仕事です。)

この通信制高校では、そこでブレーキをかけるのでは無く、一定の範囲内で仕事に触れられる場を与えているのです。

これらの体験を通じて、生徒さんは、「この仕事の●●●な所は大変だけど、条件さえ整えば自分にも○○○は出来そうだ。」という気づきを得るのかもしれません。

体験学習の中で、自分が目指すべき理想の先生像を見つけるかもしれません。

あるいは、やっぱり自分には向かないということを発見するのかも知れません。

いずれにせよ、このような小さな成功と失敗が出来る環境は、進路を模索する中高生にとって大切な場です。

勿論、生徒さんの特性に応じたサポート体制が基盤としてあるのは大前提ですが、こうした環境が、キャリアを考える上でかけがえの無い時間になっているのだと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)