教育者が準備すべき小さな失敗が出来る環境

教育・福祉業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

広汎性発達障害の傾向を持つ成人の方の就労支援を行う現場では、実現不可能な希望に対するブレーキをかけ、適切な目標設定と具体的ステップを示すのも支援者の役割であると言われています。

現実検討能力に課題がある方にとっては、長期の無業化や不必要な挫折体験、ひきこもり化を未然に防ぐ為にもこうしたサポートが意味を持ってきます。

ただ、何をもって「実現不可能」と判断するのかは非常に難しい問題です。

生育暦や障害特性に基づいた医療関係者・福祉職の判断がベースになるのは間違いありません。

しかし、あえて誤解を恐れずに言えば、究極的には何が実現不可能であるかなんて誰にも分かりません。

(事実、周囲から「向いていない」「無理」と言われた職業を、不断の努力によって実現された当事者の事例を書籍を通じて知る事が出来ます。周囲の提案は、あくまで確からしさに基づいたアドバイスです。)

とりわけ、もう少し下の年齢の方や、学齢期の方の教育を行う現場においては、安心・安全な学びの場を提供すると同時に、試行錯誤の場を提供することが重要になってくるのではないでしょうか。

具体的な例を挙げますと、昨年ご訪問させて頂いた関東のある通信制高校さまでは、保育分野に関心を持つPDD-NOSの生徒さんに対し、保育園での定期的な職業体験の機会を設けておられるという話を伺いました。

(一般には、保育園や幼稚園の先生は同時に沢山の児童を見なければなりませんし、保護者の対応や心理的な相談も含め、非常にハードルが高い仕事です。)

この通信制高校では、そこでブレーキをかけるのでは無く、一定の範囲内で仕事に触れられる場を与えているのです。

これらの体験を通じて、生徒さんは、「この仕事の●●●な所は大変だけど、条件さえ整えば自分にも○○○は出来そうだ。」という気づきを得るのかもしれません。

体験学習の中で、自分が目指すべき理想の先生像を見つけるかもしれません。

あるいは、やっぱり自分には向かないということを発見するのかも知れません。

いずれにせよ、このような小さな成功と失敗が出来る環境は、進路を模索する中高生にとって大切な場です。

勿論、生徒さんの特性に応じたサポート体制が基盤としてあるのは大前提ですが、こうした環境が、キャリアを考える上でかけがえの無い時間になっているのだと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

療育の質と利益は必ずしも相反しない

学校法人・教育・福祉業界コンサルタントの水溪です。

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障害のある児童生徒の居場所・療育の場である、放課後等デイサービス。

広汎性発達障害のある方と向き合う教育・福祉業界の中では、

●療育の質を高めるには、マンツーマンの指導が必要。

●マンツーマン指導⇒人件費増⇒良い支援をしようとすると利益は残り難い。

という認識があるように思います。

ある範囲においては正しいと思いますが、この思考が転じると

●現状のスタッフ数のもとで利用者を増やそうという経営上の努力は、療育の質の低下を招く行為である。

という誤解を現場から受けかねません。

(何を隠そう、私自身もどこかそういう気持ちを持っていました。)

しかし、本当に「療育の質」と「売上・利益」は両立出来ないトレードオフの関係にあるのでしょうか。

先日お話を伺ったある事業所では、体育や学習の要素を取り入れた付加価値の高い集団授業形式のプログラムを導入することで、一般的な放課後等デイ施設にくらべ、高い利益率を上げておられました。

この背景にあるのは、コスト削減意識では無く

●社会性やソーシャルスキルは集団の中で育んでいくものである。

という思いです。

すなわち、スタッフ数を必要以上に増やすのでは無く、優れたプログラムと人材育成を通じた指導力向上によって、療育の質と事業性の両立を実現されているのです。

勿論、マンツーマンの形態が求められるサポートもありますが、集団の中でも出来るもの、集団指導だからこそ出来ることがあることを学ばせて頂きました。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

放課後等デイサービス事業所が繋ぐ支援の輪

学校法人・教育・福祉業界コンサルタントの水溪です。

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昨日は仕事を早めに切り上げて、大阪市天王寺区にある「発達障がい支援室subaco(スバコ)」さんの勉強会に出席させて頂きました。

●subaco(http://www.subaco.org/subaco/Welcome.html

児童発達支援と放課後等デイサービスを行う同事業所では、理学療法士・作業療法士の方が中心となって専門的な療育が行われています。

今回出席させて頂いた勉強会は、本来は事業内のスタッフを対象としたものですが、希望すれば外部職員や保護者も無料で受講することが可能です。

非常に素晴らしい取り組みだと思います。

利用者さん・保護者・支援者に寄り添う事業所の理念が、こういった所にもあらわれているのでは無いでしょうか。

こうした地道な勉強会が、学校の先生や関係諸機関の人々を繋ぎ、良い支援の輪を生むエンジンになっているのだと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

医療現場における発達障害のある方への視覚支援の取り組み

学校法人・教育・福祉業界コンサルタントの水溪です。

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初めて行く歯医者さんで、今まで受けた事の無い治療を受けるのはとても不安が伴うものです。

病院特有の匂いの中で大きく口を開けながら、「どれくらい痛いのだろうか。」「いつ終わるんだろうか。」と考えていると、心細い気持ちになってしまいます。

とりわけ、感覚や聴覚の過敏さを持つ広汎性発達障害(PDD)傾向のある方にとっては、見通しのつかない中で各種の治療を受けるのは、とてもストレスフルなことであると想像されます。

長崎県口腔保健センターでは、このような問題を解決する為に、WEB上に「視覚支援ツール」をアップして情報の発信に努められています。

●長崎県口腔保健センター 視覚支援ツール(http://www.nda.or.jp/center/visualsupporttool.html

同施設のサイトでは、初診時の聞き取りによる障害の状況の把握の重要性と共に、視覚支援ツールの活用がスムーズな治療の一助になり得る旨が記載されています。

私も長年矯正歯科に通っていたのですが、その日にされる治療や、今から行われる事について予め説明をされることで、とてもリラックス出来た記憶があります。

やはり、予期せぬ痛みや刺激を受けるのは誰にとっても気持ちが良いものではありません。

障害のある方へのサポートという範囲にとどまらず、サービスレベルを向上させ、多くの患者さんに満足頂く為の視点としても大切な要素であると感じます。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

放課後等デイサービスにおける支援の質の二極化

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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就学中の障害のある児童に対し、放課後や学校休業日に療育の場を提供する放課後等デイサービス。

全国的にはまだまだ整備が遅れている地域が多数存在するものの、260万人以上の人口を擁する大阪市は比較的環境が整っていると言われるエリアです。

選択肢が多いのは喜ばしいことですが、お会いする近畿圏の経営者さまの中では、新規参入に伴い事業所間で生じた支援の質のばらつきが問題視されるようになっています。

事実、大阪市福祉局が平成24年7月に行った調査でも、発達障害児を受け入れている69事業所のうち、

●視覚支援を行っている事業所:61%

●感覚統合に関するプログラムを取り入れている事業所:30%

●PECSや絵カード・マカトンなどのコミュニケーション支援を行っている事業所:46%

となっており、発達障害児に有効とされるこれらの手法を導入していない事業所が5割前後も存在することが指摘されています。

つまり、独自のプログラムの導入以前に、療育の基盤となる支援技法だけでも、既にこれだけの差が生まれているのです。

療育の場としてでは無く「預かり」を目的とする施設も一つの在り方かも知れませんが、これらの技法の整備無くしては、安心・安全な環境の提供もままならない恐れがあります。

よりよい放課後活動を提供し、療育の場・ソーシャルスキル獲得の場を保障する為に、是非とも正面から取り組んでいきたいテーマだと感じます。

参考:大阪市福祉局障害者施策部障害福祉課『放課後等デイサービス事業所における発達障がい児支援の現状

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)