通信制高校による学童保育事業への参入

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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通信制高校・サポート校の運営で知られるKTC中央学院がこの春スタートさせた取り組みに、

●KTC放課後スクール HugPON!(http://www.hugpon.jp/

という学童保育事業があります。

同校の参入の一因と考えられるのが、通信制高校を取り巻く環境の変化です。

平成23年度までの10年間を見ても、通信制高校在籍生徒数は19万人前後とほぼ横ばいである一方、私立の通信制高校(独立校)は80校を超え、この10年で4倍以上となっています。

すなわち、生徒・保護者は数ある通信制高校から学校を選択する立場になっており、学校側は、これまで以上に高品質なサービスと独自色の発信が求められる市場環境に突入していると言えます。

このような企業努力に加え、長期的に総合的な教育機関として優位性を示していく為には、より下の年代や保護者を意識した事業展開も検討する価値のある戦略です。

事実、成長を続け2,500億円市場と言われる学童保育業界には、学習塾や大手フィットネスクラブが参入し、単なる放課後の居場所とは異なる、勉強・英会話を教える学習支援や独自のコンテンツを打ち出したプログラムを提供しています。

こうした取り組みには、事業体としての成長や若手が活躍する新たなフィールドの創出、自社のノウハウの深化、教育企業としてのイメージの向上といった効果が期待出来ます。

(もう一つ、学習塾であれば見込み客の確保・生徒の囲い込みといった狙いもあるかと思いますが、通信制高校と学童保育の関連性を考えた場合、この効果はそれほど重視されていないように思われます。)

いずれにせよ、市場の変化に立ち向かうチャレンジングな取り組みとして、個人的にとても気になる事業です。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

恥ずかしい事

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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恥ずかしい事ですが、最近出社時刻が定時ギリギリに近い状態が続いて続いてしまいました。

良い習慣を身に着ける為に、素直に改めたいと思います。

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私の尊敬するある通信制高校の教頭先生は、出張の無い日は誰よりも早く出勤し、職員室と教室の机を拭いておられました。

おそらくですが、誰も居ない朝の教室の空気に触れながら、生徒一人一人の様子に思いを巡らせていたのだと思います。

面と向かって聞いた事は無いので、あくまで想像です。

ただ、改めて思い返してみると、組織や事業を創り支える人と、それにのっかる人の境はこういった所にあるのでは、と今更ながら感じます。

ついつい自分の資質や能力の乏しさを言い訳にしてしまいがちですが、この境に比べたら、ほんの些細なことなのかもしれません。

何も学んで来なかった自分が恥ずかしい限りです。

少しでも何かを生み出せる人になれるよう、今からでも変わりたいと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

広域通信制高校が取り組む放課後等デイサービス事業

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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障害のある子どもが、放課後や学校の休業日に利用出来る社会資源に「放課後等デイサービス」があります。

本サービスは、平成24年の児童福祉法一部改正に伴って整備された障害児通所支援の一つであり、就学中の障害児の生活能力向上の為の訓練や、社会との交流の促進を行う事業です。

利用に際して必ずしも手帳は必要では無く、地域の相談センターや医師等によって療育の必要性が認められれば、原則1割負担で利用が可能です。

ニーズの高まりに対して厚生労働省も規制緩和について言及する中、福祉業界以外からの参入事例も生まれています。

広域通信制高校を運営する株式会社代々木高等学校が設立した「よよこ~クラブ」(http://4450club.jimdo.com/)もその一例です。

同施設は、学童保育になじみ難い発達障害のある児童・生徒へ居場所を提供すると共に、代々木高等学院保育福祉コース生の研修の場としても機能しています。

勿論、療育の場としての品質を維持する為には優秀なスタッフの育成が大前提となりますが、地域資源と学校を繋ぐ連携の要として、また、次の教育段階へ移行しても継続的な支援を可能にする主体としての意義は非常に大きなものです。

マーケティングの観点から見ても、自校の教育部門の認知度の向上や、入学者予備群との関係を構築する効果が期待出来る、非常にチャレンジングな取り組みと言えます。

放課後等デイサービス事業には、本事例以外にも、既存事業との相乗効果を創り出す可能性がまだまだ眠っているはずです。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

遠隔授業の発展と通信制高校の存在理由

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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2013年3月27日の日本マイクロソフトの発表で、『大阪府教育委員会、日本マイクロソフトと連携して全府立高校を対象に遠隔授業サポートシステムを提供』する、というニュースがありました。

今回のシステムは、音声と映像をリアルタイムで届けあう通信技術によって、長期入院中・自宅療養中の生徒の授業参加を可能にし、学習上の遅れを防ぐ事が出来る、というものです。

(府教委の発表では、将来は自宅や病院での勉強を単位認定することも視野に入れ、難病の小中学生や不登校の生徒への活用も検討されている事が伺えます。)

クラウドサービスの発展によって、登校が困難だった生徒の教育機会が保障されるのは大変喜ばしい事です。

ただ、全国に約250校あり、19万人近くの生徒が在籍する通信制の高校にとっては、自らの存在理由を再定義しなければならない転換点が訪れたと言えるかと思います。

というのも、通信制高校は

●「全日制・定時制の高校に通学することができない青少年に対して、通信の方法により高校教育を受ける機会を与える」こと

をその定義とし、事実上、不登校状態にある生徒や、中途退学の経験を持つ生徒の進学先としての役割を担ってきた歴史があります。

(念の為補足しますが、全ての学校がそうではありません。また私自身は、そういった学校を運営され、日々生徒と向き合っておられる先生方に個人的な敬意を感じています。)

少し想像の飛躍があるかもしれませんが、今回の大阪府の取り組みは、

●高卒資格を取得する為の、代替的な機会の提供のみに存在理由を見出している通信制高校は、今後縮小せざるを得ない。

という流れを示しているように思われます。

自校の役割の再確認と、積極的に選ばれる為の魅力の創出が必要な時期が来ていると言えるでしょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)