外国企業誘致策としての国際バカロレア教育

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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東京都に、アジアのヘッドクォータープロジェクトという外国企業誘政策があります。

本計画の狙いは、日本の立地競争力が低下する中、税制・諸規制・街づくり上の優遇施策によって、アジア地域の拠点機能を有した外国企業を誘致し、日本全体への経済効果に繋げる事にあります。

(実際に数字を見てみると、東京都内の外国企業数はピークである2005年の2,645社から、2010年の2,339社へと90%以下の水準にまで減少しています。)

上記の誘致環境整備策の教育分野のカギとして位置づけられているのが、国際バカロレア教育の導入案です。

国際バカロレア教育は、スイスの国際バカロレア機構が定める探求型の教育課程であり、その修了試験によって得られる資格は、世界で通用する大学入学資格として認められています。

東京都のストーリーでは、同プログラムを教育に対して高い関心を持つ来日外国人の子弟受入施策として捉えており、既に都立国際高等学校での導入が検討されています。

(この計画は同時に、国内の生徒の「内向き志向」を打破し、海外大学への留学意欲を持った生徒を育てるエンジンとしての効果も期待されています。)

教育プログラムとしても大変高度であり、国際的な大学入学資格が得られる国際バカロレア資格はまさに、世界から集まる来日外国人のニーズを満たす上で打ってつけのプログラムと言えます。

いち教育システムの枠を超えて、都市政策・経済活性化策の一つに採り上げられる程、非常に高い関心が注がれています。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

遠隔授業の発展と通信制高校の存在理由

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2013年3月27日の日本マイクロソフトの発表で、『大阪府教育委員会、日本マイクロソフトと連携して全府立高校を対象に遠隔授業サポートシステムを提供』する、というニュースがありました。

今回のシステムは、音声と映像をリアルタイムで届けあう通信技術によって、長期入院中・自宅療養中の生徒の授業参加を可能にし、学習上の遅れを防ぐ事が出来る、というものです。

(府教委の発表では、将来は自宅や病院での勉強を単位認定することも視野に入れ、難病の小中学生や不登校の生徒への活用も検討されている事が伺えます。)

クラウドサービスの発展によって、登校が困難だった生徒の教育機会が保障されるのは大変喜ばしい事です。

ただ、全国に約250校あり、19万人近くの生徒が在籍する通信制の高校にとっては、自らの存在理由を再定義しなければならない転換点が訪れたと言えるかと思います。

というのも、通信制高校は

●「全日制・定時制の高校に通学することができない青少年に対して、通信の方法により高校教育を受ける機会を与える」こと

をその定義とし、事実上、不登校状態にある生徒や、中途退学の経験を持つ生徒の進学先としての役割を担ってきた歴史があります。

(念の為補足しますが、全ての学校がそうではありません。また私自身は、そういった学校を運営され、日々生徒と向き合っておられる先生方に個人的な敬意を感じています。)

少し想像の飛躍があるかもしれませんが、今回の大阪府の取り組みは、

●高卒資格を取得する為の、代替的な機会の提供のみに存在理由を見出している通信制高校は、今後縮小せざるを得ない。

という流れを示しているように思われます。

自校の役割の再確認と、積極的に選ばれる為の魅力の創出が必要な時期が来ていると言えるでしょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

高等学校が創る学習支援センターという資源

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高校生の頃、「学校の授業が難しくて置いてけぼりになってしまった」という経験をお持ちの方はいらっしゃらないでしょうか。

私はあります。

全国高等学校PTA連合会が2009年に行った調査では、高校生の4人に1人が「授業が難しくてついていけない」と感じている、という結果が示されています。

このような現状を踏まえ、校内に『学習支援センター』を設け、積極的なサポートをされている高等学校さまがおられます。

東京都内の例で言いますと、かえつ有明中・高等学校さん、八王子実践高等学校さん、等々力中学校・高等学校さん、武蔵野中学高等学校さん、女子聖学院中学校高等学校さんの取り組みが知られています。

これらの取り組みを概観してみますと、学習支援センターの原点は、

●生徒が自学自習を行う事が出来、講習の受講や教員への質問が出来る場所と時間を設ける。

と言う点にあります。

一見シンプルですが、学習・質問が出来る「場所」「時間」を明示する事で、学習習慣の獲得と構造化がなされる為、十分な効果が期待出来ます。

前述した学習センターの機能を充実させた例として、ハイレベル講座、英検・漢検など各種講習を付加したり、進学指導を行うものもあります。

また、個別ブースを設け集中しやすい環境づくりをしているケースや、夜21:00まで利用可能な学校もあります。

しかし、学習支援センターの進歩は、これだけにとどまりません。

さらに先進的な学校では、

●学習支援センターのサポート体制のシステム化

を進められています。

具体的には、

●「単元別のテスト⇒分析⇒補習」のサイクルを回す事による学力向上施策

●ビデオ教材、eラーニングシステムの導入

を行い、更に生徒の学力向上に関与する形を取っておられます。

学校が持つ役割と責任を、授業外にも広げて認識されている好例と言えるかと思います。

ただ、必ずしも支援内容とコンテンツを増やせば良い、という訳でもありません。

学校が目指す方向や、生徒のニーズ、現在の校内資源を鑑みながら、自校に合ったオリジナルの学習支援センターを作る事が理想と言えるでしょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

学校説明会における座談会コンテンツ

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昨年の夏にご訪問させて頂いた東海地方の私立高等学校さまでは、学校説明会のコンテンツとして『生徒・保護者による壇上での座談会』を導入されていました。

一般的な生徒募集の場では、教職員による学校の魅力のアピールがメインになる場合が多い為、これは画期的な事と言えるかと思います。

座談会の形式は、長机に生徒2名・保護者1名が腰掛け、司会者の質問に答えていくという、シンプルなもの。

内容としては、1名目の普通クラスの生徒が、学習上のサポートや部活動の事を、2名目の特進クラスの生徒が、指導体制や周囲にも応援して貰いながら学んでいる事を自分の言葉で話していました。

先生と生徒の掛け合いからも、普段の学校生活をイメージするのに十分なものでしたが、最後の保護者のコメントは、非常に印象に残るものでした。

その方は、

●子どもが以前通っていた中学校ではいじめがあり、高校でもいじめが起きないかとても不安だった事。

●この学校は先生と生徒の雰囲気がとても良く、いじめなど無かった事。

●今は、勉強も部活動も一生懸命取り組んで、楽しみに学校に通っている事。

を、訥々とした口調で語っておられました。

不特定多数の前で、こういったデリケートな事を話すのは、大変勇気が要る事だと思います。

折りしも、滋賀県大津市の出来事が記憶に新しい時期であった為、受験生や保護者でなくても、その声に思わず聞き入ってしまうものでした。

余談ですが、このように第三者からの評価を伝える事によって、購買行動を妨げるような不安を取り除く手法を、船井流のマーケティングでは『信用訴求』と呼んでいます。

上記の座談会は、その点を効果的に活用している例と言えるでしょう。

ただ、「そうか、説明会で座談会をすれば良いのか。」とだけ取られてしまうと、古い諺に言う画竜点睛を欠く事になります。

というのも、この学校では現場の先生方主導で、10年以上の年月をかけて今ある学校の形を作られてきた、という経緯があります。

その結果が、今の学校のカルチャーや、生徒・保護者・地域からの評価として結実しています。

本当の意味で何かを変えるには、10年以上の時間がいる。

身が引き締まる思いのする言葉です。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

職業能力開発大学校という選択

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

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春分が近づき暖かさを感じる中、全国では卒業式が行われている時期かと思います。

そんな中、3月中旬のニュースで『この春卒業予定の高校生の就職率が、今年1月時点で88.3%になった』という厚生労働省発表の数字を目にしました。

この数値は3年連続で改善はしていますが、リーマンショック前である平成20年の-1.1ポイント水準であり、就職を希望する高校生17万人のうち、2万人余りが就職が決まっていない状況になります。

一定の改善は見られるものの、高校を卒業後すぐに仕事繋がるのは依然容易ではありません。

では、高校卒業予定者が仕事に関する知識・技能を習得したいと考えた場合、どのような社会資源があるのでしょうか。

その答えの一つに、『職業能力開発大学校』を利用する、という選択肢があります。

職業能力開発大学校は、高度な知識と技能・技術を兼ね備えた実践技能者の育成を目的とした厚生労働省所管の職業訓練施設で、学費も他の進路に比べて安価な場合が一般的です。

私が住んでいます近畿圏では、下記の4施設が置かれており、電子情報技術科や生産技術科、住環境科、流通・物流に関するコースが設けられています。

近畿職業能力開発大学校

附属滋賀職業能力開発短期大学校

附属京都職業能力開発短期大学校

港湾職業能力開発短期大学校神戸校

学校によっては、ものづくりの魅力や楽しさを伝える為の「出前授業」を実施し、出前授業のメニューを公表しているHPもあります。(http://www3.jeed.or.jp/osaka/college/highschool/index.html

高校1・2年生の段階で、進路を考える機会としてこれらのサービスを活用するのも、キャリア教育上有効な施策と言えるでしょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)