価値は伝えられる事を待っている

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

愚かしい事を言うようですが、私は元々「広告宣伝」という言葉が余り好きではありませんでした。

虚栄心とでも言うのでしょうか。

実際以上に自分を大きく見せようとする行為や、自らの魅力を過剰に喧伝する姿には、どこか抵抗を感じていました。

私の父が、『商い』に疎い地方の高校教師だった事も関係しているのかも知れません。

どちらかと言うと、教育や福祉の現場で、日々目の前の人と真摯に向き合っておられる教育者・援助者の方の姿に尊敬の念を感じます。

ただ、曲がりなりにも経営コンサルタントとして仕事をさせて頂くようになってから、考えも少しずつ変化して来ました。

すなわち、

●仮にどれだけ素晴らしい教育活動やサービスを提供していても、それを本当に求めている人に届ける事が出来なければ意味が無い。

●また、教育や支援を提供し続けるには、まず組織体として存続しなければならない。

という事です。

お客様や現場の先生方と直接お会いするにつれて、身をもってそれを感じます。

教育は、他の財・サービスと異なり購買頻度が低く、一生を決めるものと言っても過言ではありません。

それ故、他の業界以上に、自校に関する質の高い情報を、必要としている人に届ける事が求められます。

外からは見えない学校の魅力や役割、現場の先生方の思いなど、伝えたい事は沢山あります。

こういった魅力は認識し難いものですし、普段の先生方の教育活動もなかなか表には出てきません。

しかし、これらの価値は伝えられる事を待っています。

コンサルタントとして、その橋渡しをする力をつけたいと思います。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

保護者は「お客様」では無い

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

過去の記事(学校説明会における座談会コンテンツ)でご紹介した私立高等学校さまの夏季学校見学会は、3日間で3,000名以上もの来場者が訪れる事で知られています。

見学会の会期中は、教職員だけでは無く、在校生の保護者も来場者を迎えるのに一役買っています。

半日以上あるイベントの中、来場者が休憩する為の無料喫茶室の運営を、保護者の会が担っているのです。

一見些細な事に見えるかもしれませんが、この背景には、次のような哲学が横たわっています。

すなわち、

●保護者は、学校が提供するサービスを消費するだけのお客様では無い。

●教員と一緒に、子どもにとってより良い学校作りを行っていく主体である。

という共通認識が、学校見学会における保護者の役割といった形で顕れているのだと思います。

教職員と在校生、保護者が一体となって学校本来の魅力を伝え、未来の生徒を迎える訳です。

保護者をお客様扱いし、目に見えるサービスレベルの向上のみに重きを置いている学校とは異なる点です。

校内を歩くと、先生方と保護者の間に交わされるふとしたやりとりからも、教職員が生徒と保護者に対し本当に良い関係作りをしてる事が伺えます。

勿論、学校も広い意味ではサービス業である以上、他業界に倣って「集客」「接客」の視点を取り入れる事は重要です。

ただ、それだけではどこにも辿り着けません。

本質を突き詰めると、上記の学校のように、「共によりよい教育環境を作る関係」を生み出す事が重要になってくるのではないでしょうか。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

外国企業誘致策としての国際バカロレア教育

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

東京都に、アジアのヘッドクォータープロジェクトという外国企業誘政策があります。

本計画の狙いは、日本の立地競争力が低下する中、税制・諸規制・街づくり上の優遇施策によって、アジア地域の拠点機能を有した外国企業を誘致し、日本全体への経済効果に繋げる事にあります。

(実際に数字を見てみると、東京都内の外国企業数はピークである2005年の2,645社から、2010年の2,339社へと90%以下の水準にまで減少しています。)

上記の誘致環境整備策の教育分野のカギとして位置づけられているのが、国際バカロレア教育の導入案です。

国際バカロレア教育は、スイスの国際バカロレア機構が定める探求型の教育課程であり、その修了試験によって得られる資格は、世界で通用する大学入学資格として認められています。

東京都のストーリーでは、同プログラムを教育に対して高い関心を持つ来日外国人の子弟受入施策として捉えており、既に都立国際高等学校での導入が検討されています。

(この計画は同時に、国内の生徒の「内向き志向」を打破し、海外大学への留学意欲を持った生徒を育てるエンジンとしての効果も期待されています。)

教育プログラムとしても大変高度であり、国際的な大学入学資格が得られる国際バカロレア資格はまさに、世界から集まる来日外国人のニーズを満たす上で打ってつけのプログラムと言えます。

いち教育システムの枠を超えて、都市政策・経済活性化策の一つに採り上げられる程、非常に高い関心が注がれています。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

働きがいのある教育企業の採用戦略

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

Great Place to Work(R) が実施する、「働きがいのある会社」ランキングという調査があります。

同社の日本部門である Great Place to Work (R) Institute Japan による働きがいの定義は、

●『従業員が勤務する会社や経営者・管理者を信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感が持てる場所』

というものです。

年明けに発表された『2013年版日本における「働きがいのある会社」ランキング』のベスト35企業を見ると、従業員250名以上企業の部門の9位に、教育業界で唯一、学校法人経営で知られる三幸グループがランクインしています。

同グループの採用HPは非常に特徴的です。

リクルートサイトのトップページ(http://www.sanko-group.info/)を開くと、

●「美しい教育論だけに、逃げない。」

●「健全な利益を追いかける。」

●「手を挙げた。次の日、事業推進責任者になった。」

と言ったフレーズが画面一杯に表れ、経営意識が強調された見せ方となっています。

教育業界では一般的に、「教える事や教育業の好きな人材」「特定の教育分野が好きな人材」が集まりやすい傾向がある為、事業運営の現場に入った後に意識のギャップが生じてしまう、という声がしばしば聞かれます。

同グループの採用戦略は、上記のような教育業界好きな人材に対して、「事業性」に関する際立ったメッセージを発信している好例と言えます。

教育分野の企業においても、社員が自己の仕事に誇りを持ち、連帯感を感じながら事業成長が実現出来る組織を作る為には、採用入口段階での意識的な打ち出しが一つのカギと言えるでしょう。

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)

校名ではなく業界の魅力を伝える専門学校の広報事例

学校法人・教育業界コンサルタントの水溪です。

いつもお読み頂き有難うございます。

4月10日の京都新聞の記事、

●『「動物看護師」知って 伏見の専門学校が冊子制作』

で取り上げられていた資料を頂く為に、京都動物専門学校さまを訪問して参りました。

同校は、京都で唯一動物系の分野に特化した専門学校。

今回の冊子は、資格試験の統一によって昨年から開始された「認定動物看護師資格」に則った、動物看護師の仕事内容を伝えるものです。

この冊子の特筆すべきポイントは、

①学校名では無く、その業界(動物看護)自体の価値を伝える事に重きを置いている。

②楽しそうなイメージだけでは無く、仕事の厳しさや命と関わる仕事の重みを伝えている。

③仕事の内容だけで無く、学校が目指す動物看護師像についても文末できちんと言及している。

という点にあるかと思います。

実際、新聞掲載後、地域の図書館や企業・マスメディアからも問い合わせが続いているとの事です。

中身を読ませて頂きましたが、中高の先生方が、キャリア教育の導入部分や進路指導の場面でも活用出来るものになっていました。

(個人的には、文中にあった「動物看護師の仕事は、決して派手ではありません。」というフレーズにぐっと来ました。)

学校の枠を超えて、未来の生徒や教職員・保護者・産業界の人々に対して業界の魅力を真摯に伝える姿勢が、共感とクチコミに繋がった好例と言えるでしょう。

DSC_0005

水溪 悠樹(ミズタニ ユウキ)